第8話 メイクボックスと衣装箱
◇
けたたましい音を響かせる目覚まし時計に叩き起こされ、微睡む眼を擦りながら起き上がって洗面所へ。
鏡に映る寝起きで不機嫌なあたしを眺めながら、歯を磨き、うがいして顔を洗えばすっかりと目が冴えてきた。
不機嫌から一転、凛としたあたしは今日も……かわいいだろ?
思わず携帯端末を手に取り、鏡の前で気取った表情、ポーズを決めてから何枚か写真に納め、マイフェイバレットを一枚選んだあたしは、愛する My Knight(彼氏)にメッセージを添えて送信した。
さて、次はスキンケアで保湿してから日焼け止めを塗るまではいつも通りだが、今日のメイクはどうしようか?
皮脂吸着成分を配合した下地をしっかり目に塗り、余計なところはスポンジで吸収……よし、次のファンデーションはそうだな、ウォータープルーフタイプか、リキッドタイプか、うーん、悩むね?
ま、あいつらもメイクに悩んでいるかもしれないし、もしかしたら開き直ってすっぴんかもしれないし、あるいはまだ寝ているかもしれないし、とりあえずプールメイクの定番を押さえておけば大丈夫だろう。
それから少し時間が経ち、納得のいく仕上がりにあたしはご満悦だ。
仕上げのセッティングスプレーは忘れずに、そろそろ行こうかと携帯端末を見れば、愛する My Knightから返ってきた朝の挨拶と共に、今日も綺麗だと褒めてくれるものだから、あたしのテンションは爆上がり。
その後、メイクの仕上がったあたしの顔写真を送ったあと、あいつらも起きているのか、送られてきたメッセージからプールメイクに勤しんでいる様子だ。
続けて届いたあいつらからのメッセージは、そろそろあたしの家に向かうとのこと。
さて、それまであたしはどうしていようか?
とりあえず、今日のコーデはどうしようか頭を悩ませつつ、そもそも水着を着込んで行った方が楽だよな。
既に荷造りの終わった旅行バックを手に取り、もう一度開けてから水着を取り出し、替えの下着をもう1セット追加、入れ替えてしまえば心配もない。
現地で着る予定だった、グレー系の色合いベースのジオメトリック柄のホルターネック・ビキニを、一足早く着たあたしは、鏡の前でうっとり……しているうちに、ウィラと小幡が来ちゃうね。
こんなことをしている場合ではないけれど、折角だからビキニに合いそうなコーデにしたい。
ピンポンされてダッシュするまでに残された時間を目一杯使い、まずはキャミソール。
肌に近い色合いのものを選べば、あまり透けないだろうから、今回はモカだな。
その次はトップス、襟の付いたシャツが良いね。
鏡の前で手に取り、見比べた中でしっくりくるもの……よし、今日はアイボリーカラーのロングスリーブ、ロング丈のオープンカラーシャツだ。
ボトムスはどうしようか?……ま、そもそもあたしは運転するし、パンツスタイルの方が楽かもな。
ちょうど良い感じのフレアデニムをチョイスして今日のコーデの完成!……『PING-PONG!』……よし、間に合った。
ちょっと待ってろ、今行くからさ───。
◇
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