Part3~彼女らの再開~
正義とは何か?悪とは何か?
そのために振るわれる力とは、いったいどんな意味を成すのか。
何時しか、こんなことを考えた。
薄暗い光刺す公園。
人影はなく、光刺す蛍光灯には虫がたかっている。錆が見られるジャングルジムには子供の姿はなく、にぎやかな真昼時とは打って変わって、どこか不気味な雰囲気が感じられる。
そんな中、その公園に足を踏み入れる二人組。
純白の髪を靡かた、可憐な少女と黒髪の短髪をした、華奢な少年。
そう、那月刹那と宵島琥珀である。
「やはり痕跡は残っていないな」
「はい、能力者同士がやり合ったのであれば、少なくとも、戦闘痕跡くらいは残るはずなんですがね」
那月たちがこの公園に足を運んだのには理由がある。
「ここは元々、”炎舞”の拠点だったんだろ?」
”炎舞”この町で一大勢力を誇る能力者グループだ。
最近は特に目立った行動はないものの、前はほかの能力者グループとの抗争を行い、地域各地に甚大な被害をもたらしている。
「はい、正確に言えば炎舞傘下のグループがここを拠点に活動していたらしいです」
「であれば、痕跡や資料が残っていないのはおかしいものがあるな」
元々、二人がここに足を踏み入れたのには理由があった。
匿名通報を受けたからである。通報の内容は簡単なものであり、近くで爆発音やら銃声やら、金属がぶつかるような音がしたとの通報だ。
音の方向と大雑把な距離から、この公園付近であると、民間軍事会社CRONUSの諜報部が割り出したのである。
それから5分もせずに調査班として那月と宵島が駆り出されたのだが、そこには、死体やら血痕やらの、戦闘を行った痕跡は一切なかった。
ただの勘違いとも受け取ることができるだろう。しかし、聞き込み調査によって、この近辺での同じような轟音を聞いたという声は、多数報告されているのだ。
「痕跡がなければ捜査ができない、情報が足りないな」
「レーダーにも引っかからないですし、罠というわけでもなさそうです」
琥珀が能力を使い、周囲を索敵したり、検索により痕跡を探そうとするが見つからなかったようだ。
「はあ、一度撤退しよう。少なくとも、ここには何も残っていなさそうだ」
琥珀は頷くと、もう一度周囲を見渡し、踵を返した。
それを見て、心に残る違和感を飲み込みながら、那月もその場を後にした。
「そういえば、師匠の能力って何なんですか?」
民間軍事会社CRONUS、その休憩室。
観葉植物が多く、多くのテーブル席があり、その奥には社食のカウンターが並んでいる。
捜査の処分書を提出し、休憩時間と洒落込んで数十分が経過したころだろうか?琥珀からの質問が飛んできた。
「私の能力?そういえば、まだ話していなかったな」
那月は先ほど注文したレモンティーを飲み干すと、ゆっくりと口を開き、話し始めた。
「私の能力はあってないようなものだ。能力名は”高度演算”。」
「高度演算、ですか?」
「ああ、この能力の効果は単純で、脳内の思考力を加速させ、動体視力や反応速度を爆発的に増加させるだけじゃなく、疑似的な予測思考に由来した未来予知まで可能になる」
「相当強力な能力じゃないですか!え、でもさっき、”あってないようなものだ”って」
「そうだ。この能力には致命的な欠点があってな、その欠点というのが、爆発的な思考や意識の加速に基づく副作用、つまり、爆発的な情報を処理しすぎることによる脳のオーバーヒートだ」
「と、言うと?」
「確かに、この説明だけじゃ不十分だな、例を上げよう。パソコンやゲームなどの電子機器が莫大な情報を処理しようとするとどうなる?」
「熱が発生して、熱くなる、でしょうか?」
「そうだ。その温度がさらに上がるとどうなる?」
「内部コンピューターが焼き切れます......あ⁉」
「そういうことだ、莫大な情報量を処理した脳がオーバーヒートし、焼き切れる」
「致命的ですね」
そう、那月は今まで、能力をほぼ使ったことがない、正確に言えば、「ほぼ使用することがかなわない」そんな能力なのだ。
その為那月は、能力者と渡り合うために、様々な武術や射撃を学び、自身の織り生す経験と、技術と、知恵で、勝利をつかみ取ってきたのである。
「私の刃は経験と知恵だ。実力はそれを実行するための手段に過ぎない、琥珀も、能力に頼り過ぎると足元をすくわれるぞ」
「はい、師匠」
賑やかな声が飛び交う。多くの販売店が道を作り、客を呼び、そうしてできた”繁華街”
しかし、その外れで行われていたのは、一方的な蹂躙だった。
閃光を纏った剣戟が迸る。
紅が飛び散り、倒れ込んだ”それ”。
刹那、再び剣戟をなぞるように放たれた雷撃は、その全てを、無駄だといわんばかしに消し去った。
無力感と完膚なきまでの絶望を前にただ、膝をついた。
「何なんだよ......お前は」
足音が近づく
「お前は何で......」
鞘と刀がすり合う音が、夕闇照らす静かな路地に響く
「何なんだよぉおおおおおッ!」
瞬間、一凪の剣戟が、無慈悲に裁きを下した。
そのあとに響く雷鳴が、終わりの鐘の様にただ、世闇を包み込んだ。
賑やかな繁華街の明かりを足場に、彼女たちは走り抜ける。
忍者のごとく、建物の屋上から屋上へと飛び移りながら。
「通報があったのはこの辺で間違いないのか?」
「間違いないと思われます」
背丈低めの建物から飛び降りて受け身を取った彼女たちは、周囲を確認し、再び走り出した。
「通報を受けたのは10分前、となれば、犯人は現場から離脱していようとまだ遠くには行っていないはず」
コンクリートを鳴らす二つの足音。
風になびく長髪が、どれほどの速度で走っているかを物語っていた。
そうして、目的地に到着した彼女達。
血生臭い路地。そこに転がる無数の能力者。
「こりゃまた、派手にやったようだな」
那月は鼻をつまみながら、再び周囲を一瞥した。
「琥珀、大丈夫か?」
目をやった先には、今にも嘔吐を繰り返しそうな琥珀だった。
「大丈夫......です......」
「その様子だと大丈夫とは程遠いように見えるが?」
口に手を当て、何度もむせ返る琥珀。
「捜査どころの話ではないな、隊長命令だ、今は休んでおけ、出来るだけ転がっている間抜けどもを見ないことだな」
琥珀を曲がった先の路地に寝かせてきた那月は、転がる能力者たちの調査をしていた。
所々に争った形跡。転がるやつらには、いたるところに深々しい切り傷が残されていた。
この傷が刀傷であること、焦げ付いた焼け跡から、炎や雷を扱う能力の使い手であることを、那月はすでに理解していた。
「この間の事件と関係があるのか?それとも、また別の......」
思考を巡らせた刹那。轟音を纏った閃光とともに、その思考は吹き飛んだ。
そう、これは、ある少女と青年の再開。
否
そう、これは、謎多き能力を紐解く二人の戦い。
あとがき
皆さんこんにちは、なんか終わりが強引になっちゃいましたが、改めて、長月零斗でございます。
いや、2日もお待たせして申し訳ありません。マジで時間なくて焦りました。はい。
てなわけで今回は、那月ちゃんがとある能力者を調査するところから始まりましたね。日常partはどうしたのか?って?すいません明日にお預けでございます。
おそらく明日中に投稿ができる”ハズ”です。できなければツイッターにボイス投稿するのでお許しください。
では次回。とある能力者の一人が判明いたします。あと那月ちゃんの過去の一部が次回こそ明らかになるでしょう。
それではまた次回お会いできることを願って。
そう、これは、モン〇ンやらG〇Aが楽しすぎて投稿をさぼった作者のあとがき
否
そう、これは、モン〇ンやらG〇Aをやりつづけた作者の、反省しないあとがき。
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