Part1~仮初めの日常譚~
彼女は1匹狼だ。
他者を頼らず、己の力だけで生きる戦士。
銀箔色の髪を靡かせ、澄んだ青色の瞳を持ち、小さく白い肌をした、整った顔立ちをしている、そんな誰もが羨むような女性としての外見を有しておきながら、それの全てを棒に振り切り、彼女は引き金と共に歩む道を選んだ。
そう、全ては、自らを裁くために。
そう、全ては、自らを赦すために。
これは、彼女が戦いに身を投じ、己の過ちを赦すお話......
薄暗い部屋、汚れが目立つフローリングの床に光が差し込む。
のそりと体を起こしたその少女は光の差し込むカーテンを掴み、開け放った。
外は薄暗く、朝日が登りかけている。
「まだ少し早いか......」
目をこすりながら、ゆっくりと独り言を落とす少女。
そう、刹那である。
ベッド越しにまだ働かない頭を回して、周囲を見渡す。
白いデスク、机の上にはPC、マウス、そしてお菓子やらエナジードリンクやらが散乱している。
次に目が行くのはクローゼット、制服のスカートやら上着。休日に着るジャンバーやジャージがいたるところに散乱し、まともに整理されていない。
そんな一言で言っても「ひどい」としか形容しようがない部屋のベットで、彼女は、やらなければならないことをリストアップし、その最優先を導き出した。
「ご飯、食べよ」
ベッドから跳ね起きた彼女は、ゆっくりと部屋を出た。
この家は一軒家であるが、住人は彼女一人である。
「おはよう、お母さん、お父さん、兄さん、
棚上に並べられた遺影。そう、理由なぞただ一つだった。
挨拶を済ませた彼女は、冷蔵庫を開け、エナジーゼリーを取り出す。
最近は便利だなんだと独り言をほざきつつ、ゼリーを喉に送り込む、ひんやりとした感覚が喉を伝う。そこに味もクソも無い。最低限栄養が取れればいいのだ。朝食など。
そんな考えを持っている彼女は手早く寝巻きを脱ぎ始める。
もこもことした白色の寝巻き、ボタンを一つずつ丁寧に取っていく。
スルスルと取れる布から、白く艶やかな肌が顕になる。
体つきは華奢で、少しでも力強く掴もうものなら折れてしまいそうなほど、身体は細かった。
「ふう、よし」
最低限顔を洗い、白銀の髪を整え、制服を着込んだ彼女はいざ、水色と白のラインが入ったスクールショルダーバックを手に取り、家を出た。
朝日が照り付け、アスファルトの反射は眩しさとなり彼女を襲った。
「暑い......」
朝日に灼かれながら歩く彼女。その姿はとても可憐で、持ち合わせた美貌も相まって、出勤通学中の男性の目を奪う程だ。
しかし、気にした様子もない彼女。しまいには「暑いし走るか」と呟く始末。
そうしてまだ朝露に濡れたアスファルトを蹴り出し疾走した。
学校に到着する頃にはもうある程度の時間が経過していた。
話しながら登校してくる生徒、自転車で登校してくる生徒などが行き交う校門をくぐり、すっかり登り切った朝日に手をかざす。
「暑いからやめてほしい...本当に」
そんな愚痴を呟きながら、彼女は校内へ入っていく。
朝日の方向へ向かい、靴を室内シューズに履き替え、鍵付きのロッカーに放り入れた。
早めの登校であったからか、他生徒はほぼ居ない。
歩き出した足は西校舎玄関を後にし、日が照りつける階段、廊下を経てついに、教室へと足を踏み入れた。
古い倉庫のシャッターを開けたようなけたたましい音が響く。なぜ教室のスライドドアとはここまでうるさいのだろうか、彼女はそんなことを考えつつ、間髪入れずに自身の席についた。
まだ早いからか、教室には数人の男女生徒しかおらず、それぞれ思い思いに、言葉を交わしたり、読書をしたり、携帯ゲームをしていたりと、自由な空間だった。
彼女は教室を一瞥すると、必要な教材を机に移し、机に伏した。これは彼女のルーティーンである。
始まりにも言った通り、彼女は1匹狼だ、誰とも群れず、誰ともわかり合おうとしないのである。
当然と言うべきか、彼女には友達どころか、話せる人間すらいないのだ。
授業が始まる。
彼女は教材を開き机に突っ伏している。
教卓では教師が授業を続けていた。
「現在"能力"と言われているものが発現した原因についてだが、これはとある粒子が関係している。その粒子とは何か、また、発生した原因を答えよ。じゃあ、中村!」
「はい!近い銀河で爆発した惑星の破片が、近くの宇宙を通過したことで発生した遺伝化陰性型粒子です」
「正解、座っていいぞ」
そう、この世界には能力がある。
唐突だが、そうなのだ。
超能力、誰もが夢見た力。
この世界はそれが具現化したものが存在するのだ。
「では、超能力の発言により、治安の悪化、戦争へ無理やり能力者を駆り出す問題まで発生したのだが、これを裁決し、国連で可決された条約を答えよ......まったく、また寝てやがるな」
通常通り授業を進めていた教師だが、さすがに爆睡をしている
呆れ顔でゆっくりと近づいた先生は、彼女に近づくと盛大なデコピンを放った。
ゴスンッと言うまるでエアガンで撃たれたかのような鈍い音と衝撃が彼女を襲い、でこの部分を赤く染める。
その部分を両手で覆い、彼女は勢いよく立ち上がった。
「っ......!?痛ぁぁ!」
「バカ!寝るからそうなるんだ」
「年頃の女子にデコピンはパワハラですよ、先生」
「どの口が言ってるんだ?冗談言う前にノートを取れ馬鹿者」
うだうだ屁理屈を立てながら座った彼女。教師はため息を吐き、黒板を指差しながら半ば呆れ気味に声を上げた。
「じゃあ那月、あれを答えろ」
「能力者人権保護条約と、能力者軍事転用防止条約」
「まったく......正解だ」
何で頭は回るんだと呆れてため息を吐く先生に「ため息つくと幸せ逃げますよ」と追撃をかける彼女は「誰のせいだよ!」と、先生に突っ込まれった。
教室の角、ところどころ汚れのある放送器具から授業終了の合図が鳴り響き、彼女は再び自分に引き戻される。
前を見ると、そこには呆れ半分、怒り半分という生徒にとっては地獄としか言い表せない表情で仁王立ちしていた。
「おまえ、放課後職員室に来い、授業態度不良だ、みっちりしごいてやる」
「待って先生、話し合いましょう」
「話は聞かん。問答無用だ」
「そんなぁ......」
そう、これが彼女の日常である。
しかし、我々がこれから垣間見るのは、ただの日常ではない。
そう、これは、何の変転もない
あとがき
どうも、長月零斗です。今回は私が入れたかったシーンを表目に書き込んでみました。色々この作品内で説明不足な部分もあろうことでしょう、その辺に関しては、焦らず「なんでや!」という突込みはお控え願います。そう、何かと、次回説明したりするので。展開的には不明瞭な点はのちのち回収いたします。お楽しみに、さてさてここでこだわりポイント。作者が割と高頻度で褒められる戦闘シーン。ミリオタの皆さん、突っ込みは控えてください、これでも割とリアルな戦闘に”The fantasy”な部分を入れ込めたと自負しています。
誤字指摘やら、感想コメントやらどしどしご応募ください励みになります。
作品内では戦いに身を投じる主人公、私もそれを書き続けるべく頑張らねば(使命感)それでは皆さんまた次回。
そう、これは、課題に追われた作者が現実逃避するだけのあとがき。
そう、これは、課題をすることを諦めた作者が作品を書き出しただけのあとがき。
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