第25話 大きな旗ですわ
戦場でようやく強そうな人を見つけたのですが、偉そうな将が戦場のど真ん中にまで入って来るということは元冒険者ですわね。アーセルス王国軍は将軍が死んで次の将軍候補が微妙な時、冒険者ギルドのトップに位置するSランク冒険者から将軍を迎え入れるという話を聞いているので驚きはしないですわ。
そもそも前の将軍は私がさっくりと殺していますし、弱いとまたすぐに死にますから、ちゃんと強い冒険者を選出したのでしょう。冒険者達のまとめ役をさせるのは、元冒険者の方が良いですし。
私の騎士団5人と斬り結んで、3人はガードした剣の上からそのまま吹き飛ばし、2人はガードした剣ごとぶった切っているところを見ると魔剣の力でSランク冒険者になったのではなく、魔剣なしでSランク冒険者になった化け物が魔剣を持っていますわね。
一方の私は、魔剣『デプハスション』を持ってきていますが進軍中に何回かにぎにぎした結果、戦闘では使えなさそうなことが分かってますわ。この魔剣、絶望をさせるのではなく希望を際限なく吸い取ってエネルギーに変換するとかいうヤベー事やってますわよ。
そしてその希望エネルギーで所有者が絶望するような幻想まで見せて来るのですから所有者を餌としか認識していないですわね。所有者に希望で満ち溢れるような幻想を見せて再度希望に満ち溢れさせた方が良いと思うのですが、この魔剣はさっさと次の所有者にこの剣を握らせたいのでしょう。間違いなく所有者を殺しに来ている魔剣ですわ。ちなみに一度だけメイに持たせてみたら、目からハイライトが消え抵抗出来ずに自殺しようとしていたので非常に不味い剣ですわね。
あとにぎにぎして絶望の幻想を見せられている最中に何回かイッた結果、魔剣から極太ビームが勝手に発射することも確認出来てますわ。ピンク色の淡い光の奔流が、大きな岩を包み込んで跡形もなく消し去ったのはヤベーですわ。
これを知らずに使って味方を巻き込んでしまうのは別に良いのですが、知ってて使うのは控えたいですわね。喪失する悲しみは、故意だとあまり満たされませんの。
まあ魔剣がなくても、物理戦闘ならこの大きな旗がありますわ。この旗は太いので私の両手で抱えると右手と左手の親指同士、小指同士が届きませんわね。将来的に犯されるなら、このぐらいの極太の奴が良いですわ。間違いなくお腹が裂けますわよ。
雑魚から飛んでくる魔法には魔法で相殺しつつ、偉そうな将と向き合いますわ。ナロローザ家の家紋が入ったこの大きな旗がズタズタにされ、四肢を切り落とされて持ち帰られる姿を思い浮かべると歓喜で身体が震えますわよ。そのまま宿敵国の貴族の慰み者として一生を終えたいですわね。
ちょっといけない妄想をしてボーっとしていたら旗を上段に構えるというか、掲げていましたわ。その瞬間に、後方に控えているロウレット帝国軍5000人が突撃を開始したように思えるのでちょっと不味いですわね。現状互角かこちらが少し優勢レベルの戦況でその戦力が投入されるのは戦局が固まってしまいますわ。なんとしてでも短時間で決着を付けて貰って、連れ去って貰わないと。
「貴殿がリディア=ナロローザか?10億クレジットの懸賞金がかかっているとは思えないな」
「うるさいですわ。一騎討ち特有の語り合いとかしませんのでさっさと決着を付けますわよ」
「私の名はユルゲン。殲滅卿のユルゲンだ」
「興味ないですわ!」
上段に構えていた旗を力任せに振り降ろすも、向こうは魔剣でガードして普通に耐えている辺り強いですわね。私がぶぅんと旗で一振りするだけで、普通の兵士だと数人から十数人はぶっ飛びますのに、単純に力でも負けている可能性がありますわ。
直後に火球で追撃をしますが、敵将は薄く魔力のシールドみたいなものを全身に張っているので通じませんわね。地味にユルゲンってビッグネームですわ。5年前のロウレット帝国主導の魔族領上陸作戦の時に、魔族をひたすら狩りまくったことで有名になっていますわ。
得意なのは近距離戦で、力任せに相手を叩き潰すスタイルは私に似ていますわね。旗の柄部分から中央部分に持ち替えて、リーチを短くして相手の得意な近距離戦で勝負を挑みましょうか。
馬から飛び降り、ユルゲンの馬をぶっ叩いてユルゲンを下馬させますわ。自然と敵兵もこちらの兵も私とユルゲンから距離を取ったので思う存分戦えそうですわね。そのままガンガン旗と魔剣で打ち合いますが、こちらの旗だけがどんどん削れて行くのでいずれ折れそうですわ。
……しかしここでロウレット帝国軍が突入してきて、完全に戦況がこちら側で固まってしまいますわね。私達を囲む兵が全てこちら側の兵になった頃、ユルゲンは撤退を決めたのかこちらに背を向けて逃げ始めますわ。一騎討ちの途中で逃げるのはずるいですわよ。ちゃんと私を気絶させて連れ帰って下さいまし。
最後に、旗を真ん中からボキっと折って二回投擲すると折った断面が刺さったのか結構な出血が伺えるので今日はこれぐらいで勘弁してやりますわ。次は途中で逃げないで下さいましと叫んで、今日はこのあとたくさんアーセルス王国軍を捕縛しますわ。
縄をいっぱい使った緊縛プレイは縛る側もちょっと楽しかったですが、それ以上に縛られたアーセルス王国軍の兵がひたすら羨ましかったですわ。出来れば私も、裸一貫で強く縄に縛られたいものですわね。
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