第1話 今日からサイジュウホルダー
じいちゃんが未知のサイジュウを探す旅に行くと言い、そのまま行方不明になって10年、とうとう俺はサイジュウホルダーになるための認定試験を受けられる年齢になっていた。
サイジュウホルダーになって外の世界に出てじいちゃんを探し出すと決めてから、俺は努力を重ねて、第5エスパー養成学校を16歳で第三席として卒業できた。
俺としてはどうでもいいことだが、学校の先生たちが言うには、最年少ではないけどなかなか早い年齢での卒業だったみたいで、それを踏まえれば第三席というのはなかなかの快挙だったらしい。
それについて事情を知らない母さんは鼻高々といった感じだったが、俺の目標を知っている父さんは仏頂面で俺は今でも反対だと零した。
エスパー学校を優秀な成績で卒業した者には第3級サイジュウホルダー資格の受験資格が与えられ、無事に試験に合格すればサイジュウを相棒として使役することが許されるようになる。
サイジュウさえ手にすることができれば、一部の危険な領域を除いて自由に洛外を出入りすることを認められるから、野生のサイジュウが生息している場所にいっても大丈夫だということだ。
そして、今日はとうとうその試験日だ。
前日に緊張で眠れないということもなく、体調は万全の状態だ。
まぁ、試験とは言っても俺が受けるのは3級サイジュウホルダーの認定試験で、それほど難しくない試験だ。
サイジュウを使役することに問題がないと判断されれば誰でも(と言ってもしっかりエスパー養成学校を卒業することが前提だが)合格する試験だ。
とはいえ、試験の結果によって最初に与えられるサイジュウが変わるという噂もあるから、受かるだろうからと慢心をしないように気を引き締めて取り掛かるべきだろう。
朝食を食べ、鏡の前で身だしなみを確認する。
車の免許の試験と同じで、結果はその日のうちに出るから、よほどのことがない限り俺は今日サイジュウホルダーになる。
そう考えると、なんだかウズウズしたような、それでいて緊張もあって、いつも以上に身だしなみを整えようと変な気合が入ってしまう。
そんなふうにして、少し支度に手こずっていると、試験に車で送迎すると言って仕事を休んだ母さんが俺の様子を気にして、洗面所に来て声をかけた。
「ちょっとジゲン、いつまでものんびりしてると試験に間に合わなくなるわよ」
「わかってる!」
別段のんびりしているつもりはなかったが、どうやら自分が気づかないうちに没頭してしまっていたようで15分も時間が経っていた。
現在の時刻は8時15分で、試験は10時半からだから、まだ少し余裕があるとはいえ、大事な試験なんだから、そろそろ出発したほうが良さそうだった。
身だしなみを確認するのを切り上げて、俺は財布や弁当など忘れ物がないかを確認した。
「行ってきまーす!」
完全に準備を終えたので、俺は母さんに声をかけてから玄関を出て、試験会場に向かった。
サイジュウ・コレクト べっ紅飴 @nyaru_hotepu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。サイジュウ・コレクトの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます