第7話 或る大人の記憶
「先生、ここの公式ってなんでしたっけ?」
「教科書ちゃんと読みなよー、そこはね…」
「先生すみません、こいつが転んで怪我したんで手当てしてたら遅れました!」
「大丈夫か、お前達もありがとう。優しいな」
平和な、良いクラスだと思っていた。私は大間抜けだった。
ある日、2人の生徒が学校で自殺した。それぞれ違う棟の屋上から飛び降りて。前日に質問に来た生徒と、転んで怪我をした生徒だった。教科書を棄てられノートを破られた彼女は、私にちゃんと教科書読んだか、なんて言われてどう感じただろうか。私に洞察力が無かったが故に転んでもそうはならない怪我をしていた彼は、気付いてもらえずどんなに辛かっただろうか。
その後、彼らを死に追いやった5人も他のクラスメート達に面白半分に責任を追及されて死んだ。ああ、子供に気持ちなんか持たせるから。判断なんかさせるから。
そんな時、神が死んだ。突如子供達に芽生えた謎の能力は、瞬く間に世界を荒廃させた。大人達はなんとか手持ちの兵力で彼らを一都市の中に閉じ込めた。そしてその中でヤツが目覚め、精神外科手術により感情を潰した人間を機械で補助し働かせる、なんてことを思いつく。その余りにも大きな能力でもって思いつきを即実行。わずかに感情を残された、人として生き残らされた我々は学研都市の"教師"の任に就く。これが50年前のことだ。何故、今更になって変格を起こそうとするのだ、子供達よ。
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