第6話 血で血を洗う戦い(前)
転校生にはつき物の質問攻めをお淑やかに回避しやがった彼女は難なくクラスに馴染み始めていた。その様子に安心し、放課後(間が飛びすぎだって?寝てた)教室を後にして下駄箱に向かう。ダダダ、と階段から足音がしてその主は最後の一段につまずく。うまく着地したか、と思ったが数歩進んでコケる。眼鏡が少しずれて前よりは短くなったスカートがめくれ上がっている。わかってるよ、どうせ風使いだ、短パンとかだろ、と思ったら、黒い。機動隊とかの履いてそうなズボンが足の付け根辺りで切ってあり、バンドで数個グレネードが留めてある、とかいう物騒な装備を履いていた。
「はっはっはァ、サービスにはならなかったな!」
…元気そうだ。肩透かしを食らったような気分になりさっさと靴を履いて外に出る。
「あ、そーそー、担任からの伝言だァ。『単位課題よ、校長室に風知と行きなさい』だってよ。めんどいなー、先行ってるぞ。」
ダダダダダ。そーいう大切なことは早く言ってよね。上履きに履き替え直すのが面倒だ…
扉を4回ノック。作法がわからん。開けて中に入ろうと、
ドンパンドンガン、バキボバッ、ドドッ!!
すると爆音が押し寄せてくる。小さな部屋の奥にもう一つ扉があり、向こうから轟音と閃光が炸裂しまくっている。誰かと戦っているらしい風知が
「ダンナ!合図したら中になんかぶっ放せ!ハイ今ァ!!」
などと叫ぶ。早いわ!しぶしぶ懐から即座にスーパーの買い物に付いてたわさび小袋を取り出して口にねじ込み、左眼に手を添えると、待ってこれわさびじゃない!?ホースラディッシュだ!辛ぇ!?
ドッパァン!!と水球が射ち出され、風知にアサルトライフルをぶっ放していた男に当たる。意外と広い無骨な隠し部屋にもんどりうって転がってゆく。と、
「フン、なかなかのリスクだ。大人は情で動く訳にはいかぬ、そんな不要なモノを育むとはな。少し喋りすぎたか。権限が大きいってのも考えものだ。」
部屋の入り口から声がし、振り向くと
―にこやか笑顔の朝礼で有名な、ウチの年の割にはゴツい校長が。能面のように感情を削ぎ落とした表情と声で立っていた。―
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