第34話 全て同じだと思っている
歩いて十分はたっただろうか、さっきから俺のことをつけている奴がいる。なにより怖いのが、完全に気配を消してはたまに出し、それに加えて気配を出すたびに俺との距離が徐々に近くなっていく、落ち着け…素数を数えて深呼吸をしろ…
「そこの君、ちょっといいかな」
俺は真後ろから声をかけられた
まさか相手から接触してくるなんて予想外だ。どうする…いったん振り向いて相手の顔を確認しておくべきか
「なに、急ぎの用事があるから早めに要件を話してくれない、か…」
俺はそいつの顔を見た。白い髪に白い瞳で20代前半と思われる若い男だった。
そして俺はこいつの姿を見た瞬間、もし戦っても勝算がない。俺は師匠から魔法を教わったとき、少しでも勝ち目があるのなら背を向けず、勝てる状況を作れと言われたが、こいつにそんな小細工は通用しない…どうやって逃げる
「まってくれ、僕はただ君と話があるだけだ」
その男は俺に必死になって出す声を無視できなかった
「分かった、話を聴こう。だけど場所を移さないか」
俺とその男は近くのカフェで話すことになった。お互い注文した飲み物が届いたところで相手から話し始めた
「僕の名前はマーリン、マーリン・エムリス、君の名前も教えてもらってもいいかい?」
「俺の名前は…アレン、ただのアレンだ。それで早く本題に入ってほしいんだけど」
さすがに初対面でさっきまで尾行してきたやつに本名を名乗るわけにはいかない、たとえエムリスが俺の本名を知っているとしてもだ
「僕が君に話したいことは、単刀直入に言ってしまうと、僕の弟子になってキャメロットに留学してほしい。もちろん断ってくれてもかまわない。もし僕の弟子になってくれるのなら君の望む情報を与えられる。例えば魔眼の能力とかね」
さて、どうする。彼が僕の弟子になってくれたとしても最悪の未来を回避できるとは限らない…どちらにせよ彼には魔眼を制御してもらわないと話にならない
「断る。お前は信用できない」
「なるほど、信用か…それは確かに言えてるね。だったら話題を変えよう。君は王国の地下に何かがいる、いやあるともいえる」
近づいてみて分かったが、このマーリンとやら異質な魔力を漂わせている。この感じ…神力に近いものかだが何かが違う。こいつの秘密を知るためにも話を聴くべきか
「俺にそれを話して何になる。エムリスさんにとって何かメリットでもあるのか」
「いや…ただ君にはそれを知る権利があるからさ、このまま放置しておくわけにもいかなくてね。それで王国に地下にあるのは神剣だ」
神剣ってたしか北側諸国にの神話によく出る神が造ったとされる伝説の剣だよな、それが王国の地下にあるだと
「その目、君もしかしなくとも僕を信頼してないでしょ」
「当たり前だ。神剣だとかそんなの信じる奴なんかいるわけない」
「なるほど、君はそういう人間か。だったら魔眼の話に変えよう。君はこの世界における魔眼は最初から魔眼だと思っているのならそれは大間違いだ」
マーリンはさらに淡々と続け、アランはそれを黙って聞き続ける
「魔眼というより眼にはランクがある上から順に、神眼、魔眼、邪眼、天眼という順で天眼が最も扱いやすく負担が少なく、神眼が最も扱いにくく負担が大きいがその分効果は絶大だ。神眼を持つ人間を殺せるのは神眼を持つ人間だけ」
「まて、本当にその話が本当ならなぜ魔眼しか知れ渡っていない」
「全て同じだと思っているからだろうね」
全て同じだと、名前からして違うのにどこが同じだと。いやもしかして
「天眼から神眼まで上げてももしかして見た目とか何も変わらないってとことか?」
「おしい、君の言う通り天眼から神眼になっても見た目も能力も変わらない。ただし能力は強くなる」
能力は強くなる。それ以外に変化はないということか。さてと、こいつからどれぐらい収穫があるか分からない。もっと情報を知りたい、特に魔眼のことに関しては
「急に聞くけど、お前は魔眼もしくは特殊な眼を持っているのか」
「持ってるよ。能力は秘密だけど、僕は生まれつきだから幼少期は結構苦労したよ制御がうまくいかず何人か餌食になった」
餌食か、俺も魔眼を制御できいなかったらどうなっていたのか、いや待てよ、俺の眼が魔眼ではない可能性もあるのか。最後にこれを聞いておしまいにしよう
「これが最後の質問だ。運命の大図書館がどこにあるか知っているか…?」
「それを知って君はどうするのか聞いてもいいかい」
今までと雰囲気が違う。こりゃ下手な回答をしたらまずいかも
「どうもしない、ただ知りたいだけ、一種の好奇心で聞いてるだけで特に意味はないから答えなくてもいい」
「悪いけど知らないね」
嘘だろうが、ここまででいいだろう
「話はこれで終わりなら、俺は要件があるから」
俺は席を立ち、そのまま会計を済ましてカフェから出るためにドアに近づいたときにマーリンはいつの間にか背後にいて、そして俺に一言
「眼を持つ者同士お互いに頑張ろう」
そう耳打ちし俺よりも先にカフェを出た。そして俺が肩にかけているカバンが急に重くなり、中をのぞくと一冊の魔導書が入っていた
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