第32話 帝国滅亡

 寮に来てから一週間の月日がたったとある朝、リビングから大声が聞こえたので俺は急いで部屋を出てリビングに走った


「みんな、なんかあったのか!」


 俺がリビングに着くといつもなら、この時間はヅェディが新聞を読んでいるのだが今日は珍しく全員がヅェディに集まって読んでいた


「おい!アラン見ろよこれ!」


 こいつはタバス、学園の二年生で俺の先輩だ。いつもならスクワットやら腕立て伏せやらをしているが、今日は鼻息が荒く興奮しながら俺に、こっちにこいと、ジェスチャーを送り、近づいた俺にある一面の記事を指さす


「帝国が滅亡しただと!」


 あまりにも予想外すぎるニュースで俺は今まで出したこのない大声で叫んだ


「滅亡というより属国になったけどな」

 

 今も驚いて文字通り開いた口が塞がらない俺に冷静に話すヅェディに、俺は一瞬

この人さすがに冷静すぎないかと思うのもつかの間、俺は属国と聞いてどこの国に属したのかをすぐさま探し出すとそこには去年から帝国と戦争を始めた


「神聖キャメロット帝国だと…嘘だろ、つい最近まで劣勢だったキャメロットがなんで急に」


 戦争が始まってから神聖帝国軍は常に劣勢で誰もが勝敗はついたと思っていた戦争だが、とんでもないどんでん返しだ


「アーサー王に掛かっていた竜帝の呪いがとこたことで、今までこの機に暗殺をもくろむ帝国軍からアーサー王を守っていた円卓の騎士が、もう心配はなくなったことで円卓の騎士のモードレッドとランスロットが前線に出てきて戦況が一気に有利になったんだってさ。アラン、この円卓の騎士ってどれぐらい強いと思う?」


 俺の横で記事の内容を話すタバスだが、それと同時に目をキラキラ輝かせる。こいつは十歳の子供で好奇心旺盛だからか円卓の騎士の強さに興味があるらしい


「帝国軍って確か兵数がおよそ30万あって神聖帝国軍はおよそ10万だよな、円卓の騎士が二人前へ出るだけで勝てる戦争なのか」


「そうだアラン、これを渡しておくよ」


 ヅェディは俺に一枚のパスポートサイズ紙を渡してくる。そこには外出許可証と書いてある


「え、マジで。いいの⁉」


「前々から外出したいって言ってたからな。最近は行方不明事件が起こっていないことから学園長に頼んでみたら意外とあっさり発行してくれたぜ」


 ヅェディはドヤ顔で俺に話す


「アランだけずるいぞ!」


「そうだ!そうだ!僕たちも外出許可をよこせ!」


 上級生のハバとジョロは外出許可証欲しさに俺たちより格上のヅェディを倒す勢いで抗議する。学園では四年生から上級生で三年生までは下級生、ハバとジョロは今年から上級生らしい


「うるせェェェ!お前たちは問題を起こしすぎなんだよ!」


 ヅェディはそいつらよりもはるかにうるさい声でさらに叫ぶ


「お前たちは他学年の貴族生徒に喧嘩を売るわ、嫌がらせをするわで、一回俺が監督不注意で首にされかけたんだ!」


 え、そんなことがあったの?初耳だ。詳しく教えてほしいところだけど今はそんなことを言える雰囲気じゃないな


「ヅェディさん!確かに俺たちは貴族生徒に色々問題を起こしました!ですが、元はあいつら手を出してきたんですよ。俺たちはあのゴミどもと違って殴るなどはしていません!」


「殴る殴らないじゃなねェよ!まず問題を起こすなって話だ!」


 ヅェディはハバの抗議を一掃する


「だったらやり返すなって言うんですか!向こうから先に仕掛けてきたのにやり返されないと思っているのはおかしいです!あいつらは実技以外でも魔法を放ったり木剣で僕たちを殴ってくる!やられっぱなしではいられません!ヅェディ先生がどう思っているかは知りませんが、この問題は見て見ぬふりをする学園側にも責任があります」


「確かに、それはそうだ…一理ある」


 ジョロの抗議にうろたえるかと思われるが


「だが、それはそれとしてお前たちがやり返したところで、あいつらが反省した姿を見たことがあるか」


「ないです…」


 ジョロはぼそぼそと答える


「だろう。やつらの低能じゃ自分たちに責任があるなんて考えない。時間の無駄だ」


「あ、ちゃんとヅェディも貴族嫌いなんだ」


「当たり前だろう。そういうアランも貴族が憎いと思わないのか」


 う~ん…俺はヅェディからの質問に頭を悩ませる。俺はレステル男爵しか知らないから何とも。だけどここは雰囲気的に


「ま、まあ…憎いです…それよりもう外出してもいいですか?」


「いいぞ、行ってこいと言いたいところだが、アラン、お前パジャマのままだから着替えてこい」


 そういえば急いで着替えてなかったんだぁ~

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