第31話 平民寮

 俺は寮に着いたらすぐに玄関を三回ノックをした。すると中から「少し待って」と帰ってきたので大人しく待っていると、木製の扉が開き、まず目に入ったのはゴリゴリに黒い蛇の入れ墨がある左腕だった


「えっと…その、今日から寮で生活するアラン…です」


 やべぇ、ビビりすぎて声が全然でないのに顔も反射的に下に向けちゃった、レステル男爵に初対面の人と話すときは目を合わせろっていわれたのに


「あ、君が学園長が言ってた子ね。俺…じゃなくて、僕はこの寮の管理人かつ数学教師のヅェディだ。敬語とか使わなくていいからよろしくな、じゃあ部屋まで案内するから上がって、あと靴は右側にある下駄箱に入れてくれ」


 俺は顔を上げると、ヅェディという人はサングラスに髪の毛が青髪交じりで身長も170後半はある。

 そして布越しに分かる割れた腹筋…最近よくマッチョな野郎に会っているが気がするが、そんなことは置いといて…いや置いとけない、あの人さっきから後ろ姿からでも覇気を感じるし…


「おーい、上がらねえのか?」


 俺が立ったまま動かないことを不思議に思ったのか振り向いて声をかけてくる


「え、あ…はい!今行きます」


 俺は靴を下駄箱にしまった後にヅェディの後についていく


「ここが君の部屋だ」


 ヅェディは部屋のドアを開けて室内に入る

 ヅェディに続いて俺も室内に入ると六畳か七畳はある部屋を見渡す

 まさか一人一部屋とはルームメイトがいるかと思ったのだが


「ベットや家具はもう置いてある。風呂は共有の大浴場だ、使える時間が決まっているから昼寝で寝過ごしたらもうその日は風呂に入れないから、一日の食事の時間も決まっているから忘れないように」


「お風呂あるんですか?」


 村だと基本的には水浴びに近かったからな。たまに魔法でお湯を出して体洗ってたしな、思い返すと噴水広場の掲示板に張ってある地図に公衆浴場がかいってあったような


「共有だけどな、さっき言った通り使える時間が決まっているから遅れないように、あとは…これ渡しておく」


 俺は一枚の紙を渡される。見た感じだと


「時間割表?」


「その通り、ご飯と風呂の時間がそこに書いてあるから」


 それからも寮を歩き回り案内してもらった。大浴場のほかにも倉庫や、緊急時用の出口も教えてもらった


「案内してもらって改めて思ったけど、この寮めっちゃ広くない。貴族の別荘並みにある気がする。それに、こんなに部屋があるのにほとんどは空室のまま」


 俺はヅェディについていきながら思ったことを口走る

 寮を回ってみて思ったのは、もともと寮室だと思われる部屋はほとんど空室になっていることだ。

 

「空室が多いのは前学園長までは平民専用の学園だったからだ。学園長が変わってからだな貴族も通えるようになったのは…平民を差別し奴隷としか思っていない貴族が学園を通うようになってから、この学園を通う平民は減っていき今となっては平民の男子寮だけでも生徒はたったの15人だ。減った分空き部屋が増えたのさ」


 そんなことを言うヅェディの後ろ姿は何とも悲しそうにしか見えなかった。きっと昔はもっと活気があったのだろうだが、貴族が平民を見下し平民は貴族を嫌う今ではこうなるも仕方がないことなのだろう


「ヅェディはどうして学園長が貴族を受け入れたと思う?」


「まだ知り合って間もないのに呼び捨てか!まあ…俺じゃなくて僕からしてもそっちの方がいいけど他のやつには気をつけろよ。それで貴族を受け入れたの理由は金が欲しいからだ」


 師匠と同じことを言うヅェディだが平民の学費は国が負担しているから学園も特に損はしていないはず


「平民の学費は国が払っているからちゃんと金は入ってるだろ、それと貴族を受け入れることの関係はどこに」


「税金だ」


 俺の言葉を遮りヅェディが淡々と話すその姿にはイラついているのが見て取れる


「三年前の帝国との戦争で王国がぼろ負けしたことで国が兵力を増強ために増税したんだよ、それで公務員に払うかねも制限されて僕たちの収入が減った。そこで学園長は貴族の入学に必要な実技試験だが実力試験だかよく覚えてないがそれを無くす代わりに倍の金を出させた。だから貴族生徒を受け入れるだけ金が手に入る」


 マジで終わってんな学園、つまり裏口入学だろ


「ヅェディは何とも思わないのか?」


「思うさ、だけど僕の給料が毎年変わっていないのもそれのおかげだからな、文句が言えないだけだ。それよりいったん部屋に戻って休憩したらどうだ。ずっと歩ているからな」


「はい」


 俺は言われた通り部屋に戻った


「ふぅ…こんなもんでいいかな」


 俺は荷物を部屋に整頓し、ベットに座って休憩をする。

 まあ管理人が入れ墨を入れてる以外あまり驚くことはなかったな

 だけど、この学園には問題がある。だが帝国との戦争が終わらない限りこの問題は解決しない。それより警備兵には外に出るなって言われたけど


「近くの図書館に行くぐらいならいいだろ」


 それにもしまた迷ってもスペースブレイクで出られるしな

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