第30話 スペースブレイク

「クソ、いくら何でもおかしいだろ、もう一回…」


 某アニメの中二病爆裂魔法使いのように…エクスプロージョン!

 狙った座標に放ったが水に沈み込むように衝撃が吸収され、本来なら普通に生きていれば聞かないほどの爆音や、それと共に火傷してもおかしくないほどの熱風と巨大なクレーターができるが、まるで最初から何もなかったように意味がなかった


 俺はあれからもひたすら爆裂魔法を打ち続けた。魔力で爆発するタイミングをずらしたり、爆破の威力よりも爆破後に生じる爆風の威力を上げたりしたが変化はない

 エクスプロージョン九回も撃ったのに…なんの変化もない


「空間に直接ダメージを負わせないと意味がないのか、それとも俺の魔法がザコい

だけか…いっそのことアレスを使って」


 いや、師匠の教えの中に役に立つものを探す…そうだ!魔術、発動させることに

関しては魔法の方が必要な魔力が少ないが持続させることなら魔術の方が少ない。

 こんな広範囲の空間を維持するのなら魔術としか考えられない、術式で解析可能。

 俺は早速、石畳に触れて空間を構築している魔力を吸収する。そして吸収した魔力を解析魔法の一つマジックアナリシスを発動させて魔法を解析する


「空間魔法って意外とシンプルなのか」

 

 解析を始めて十分ほどで中途半端ではあるが空間を破るの支障がないほどの解析が終了した。やはり魔術だったが予想外なのは空間魔法は案外シンプルな構造だということ、だけど必要な魔力量が多すぎる。だが背に腹は代えられない

 俺は左手を前に突き出し手のひらを広げ魔力を集中させる。イメージは…何もない空間に割れたガラスのようにひびができて割れるような感じで


「スペースブレイク」


 それを唱えイメージを強固にし魔法を強化して魔力を放出すると、瞬く間に空間は割れて砕け散る。割れ目はどんどん広がってゆき、そして割れた空間の向こう側には大勢の人たちと噴水広場が見えた。間違いなく王都の中心だ

 俺はそのままは向こう側へ進むと


「ちゃんと出れたな、あの異空間から」


 脱出に成功した

 それから二十分間地図に従って歩いた。寄り道せずにまっすく学園へ向かった


「よし、今度はちゃんとついたな」


 寮は学校の敷地内にあるため学校の正門から入って歩く必要がるんだけど、門扉が開いていない


「おいあんた、学園の前で何をしている。変なことをしているのなら騎士団に突き出すぞ!」


 俺に槍を向ける顔をしかめる三十代後半と思われるおっさん。おそらく学園の警備兵だろう。ちょうどいいなんとか話して学園に入れてもらおう


「不審者でもないよほら、これ学生証だよ」


 俺は学生証を警備兵に見せる


「あんた学生なのか、勘違いをしてすまんな。それで正門の前で突っ立ってどうしたんだ」


「寮に荷物を置きに来たんだよ、だから門を開けてほしい」


「それはできないな、開門は許可が出ない限り開けらないように魔法がかけられてるからな、今から学園長に許可を求めるから少し待ってくれ」


 警備兵は俺の目の前でスマホサイズの青い水晶板を出し俺から少し遠くへ離れ聞こえない声で話し始める。俺は警備兵が話し終わるまでの間暇なのでさらに空間魔法の解析を進める。お昼時になったあたりで警備兵がこっちへ駆け寄てきた


「許可が下りたから門を開ける。少し離れてくれ」


 言われるままに門から離れると警備兵はまた水晶板で何かを操作すると門扉がギシギシときしむ音を鳴らしながら少しづつ左から右へスライドしていく。そしてちょうど人一人が通れるほど開いたら止まった


「さてと、こんなもんでいいか…あっそうだ寮に入ったら外に出るなよ」


 警備兵は急に何かを思い出して話始める


「なんで、別に問題なんか起こさないけど」


 俺は面倒ごとを起こす人間なのかと思われているのだろうか


「違う、近頃王都で行方不明者が出ている」


 行方不明、もしかしなくともあの空間魔法のやつか


「具体的にはどこ多く発生しているの」


「どこでもだ、市場、広場、路地裏そして学園内でもな、騎士団は朝も夜も関係なく行方不明でて身代金を要求しないことから人身売買を目的にした隠密系魔法による

誘拐事件だと考えているだから部屋はまだいいとして寮からは出るなよ」


 警備兵はそう言い残して戻ってしまった。俺は警備兵の背中が遠のいていくのを見届ける。その中で思ったのことは、あのおっさん結構強いかも

 俺はそのまま真っ直ぐ寮へ歩く。

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