第25話 看過できん

 アランがフォルティスと冒険者になると言ってる。同時刻、天界では


「まさかここまで運命に従わないとは、少しいじるくらいなら」


 大丈夫、この程度ならさほど問題には


「まてペルセポネ、これ以上は看過できん」


 おっさんのような野太い声に、隙のない立ち振る舞いに加え、見るだけでも暑苦しい筋肉だるまに赤髪で巨体の男、間違いない…


「アレス、元々はあなたがアランに手を貸したから起こったことです」


「ふむ…確かにそうかもしれんが、ペルセポネ、貴様もしかしなくともイザナミに

黙ってあの少年を転生させたのだな」


「なっ…どこでそれを」


 明らかに表情を変えるペルセポネにアレスは呆れた顔をする


「イザナミがカンカンに怒って負ったぞ、今日の死者の数が足りんとな」


「イザナミ、そこまで管理していたなんて…はぁ認めます。私があの人間を無断に

転生させました」


 こうなった以上隠したって無駄、白状して早く帰らせないと


「人間を転生させる場合、その人間の出身国の冥界の頭に許可をもらわなければならない、これは我々神が決めたこと、それを破るとなれば、貴様はイザナミどころか

ゼウスともやりあう気なのか」


「そんなわけないでしょ、ゼウスならヘラにまた浮気したと言えば流せますが、

イザナミとなるとさすがに面倒です」


 ゼウスは正面から戦っても勝ち目がない、あってもごくわずか…イザナミに

関しては勝ったとしても日本の地獄の裁判をしている閻魔大王の仕事が増え、余計にかわいそうになる


「それに貴様、さっきアランの運命に干渉しようとしたな」


「そう…ですね」


「人間の運命に神は干渉してはならない、それはなぜだかわかっておるだろう」


 始まった、おっさんのだるい説教


「分かっていますよ、で・す・が、それは神力を持たない人間に適応される決まりで合って、アランは神力を持っているので問題ありません」


「確かにアランならば問題はない、しかしダラスはどうだやつは神力がない」


「ダラスには干渉していません、私が干渉したのはあくまでアランであってダラスではないため大丈夫です」


「なるほど、アランの運命にダラスによる森での実践訓練を付け加えたということか」


 こやつ、ここまでするとは…わしが知るペルセポネはこんなやつではなかったというのに、一体あの人間そこまでする理由があるのか


「付け加えたのではありません、アレス、あなたには言っていませんでしたが彼は

運命を変えることができる人間です」


「なんだと」


 運命を変える人間は、どこの宇宙世界を探してもラグナロクが起こった地球

だけ、あの世界には存在しない。本来いない存在が生まれたら世界がどうなるか


「だったらなぜアランをあの世界に送った!運命を変える人間は己の運命だけでは

なく他人の運命にも影響を与えるというのに」


 アレスは怒る。なぜなら過去に運命を変える人間が原因で宇宙が一つ消えたの

だから


「そうですね、だから送ったのです。もしかしたら勇者の運命を変えてくれるのかもしれません」


「そう都合よく物事が転ぶとは限らん!いいかペルセポネ、わしらは数少ない複数の宇宙の管理を任されおるのだぞ、あのゼウスでさえ任されておらんのだぞ!」


「そうならないよう私が運命の軌道を修正したのです」


「した」だと、まさか…いつの間に」


「あなたと無駄話をしているときにですよ、まあ彼ならうまくやるでしょう」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る