四十九日

「・・・おや。もう『失われた本棚』たちの処へ、『魂の図書室』へは行かれませぬか?」


 肉体的にはもう、大人と言っていいほどに成長した男が、蝶やリスなどの小動物に囲まれて、共に日向ぼっこでもしてるかのように岩の上で横たわっていた。


「・・・ああ、どうも。ええ、はい。最近は僕も『』に見習って、耳を傾けることにしました。あの時は、僕にそう言いたかったのでしょう?それが最近、分かってきたのです。歴史や過去というのは、どの立ち位置として、そしてどう受け取るかですら、結局、逆転すらしてしまう程に変動する。片方だけの情報をいくら知ったとしても、その本質は全く見えてこない・・・だからこうやって、色んなモノの声に焦点を定めて、梓さんの真似をして耳を傾け聴いてみることにしました。梓さん程、霊体や精霊たちに意志と意識を繋ぎ本心まで解読は出来ませんが、じっくり、噛み締めながら、自分なりの解釈でもいいから語りかけられてくる言葉を理解していこうと思います」


「良いことですね。その調子ですよ『』。もう、能力についての畏怖や嫌悪は拭え払えたように見受けられますが?」


「・・・ええ。なんとか制御できてます。これも住職と梓さんのおかげで。本当に感謝してます」


 梓は目を瞑り、意識を別へと移動させ集中した。


「・・・和尚も、喜んで居られます」


「そうですか・・・これからは、僕が梓さんを守ります。雲徳とも、そう約束をしましたから。約束は、絶対に守ります。そうお伝え頂けますか?」


「頼もしい限りです。改め伝えなくとも、とうの昔にご承知みたいですよ」


 二人は目に涙を溜めながら四十九日を迎えて、石碑に架けられた数珠を見上げて微笑んだ。




『心霊カンパニア』 第一部     END





イメージ画像⇩ 近況ノート

https://kakuyomu.jp/users/silvaration/news/16818093084574750173

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