瘴気と愁気
「・・・やっぱり、ここに来ちゃったんですね」
「・・・みたいですね。凄く嫌な予感が濃くなりました。決して眼を離さないでください」
「はい・・・・・・」
梓さんが今までにない面持ちでボクと重なっている眼を睨ませる。
それにしても桃ちゃんは一人で夜中にこんなところによく来れるなと感心する。ボクなら怖くて絶対に無理だ。例え視えないと言っても、その能力が故に嫌でも感じるはずだ。でも、逆に考えればこの古民家で怪しいのは離れの小屋だけであって、母屋はただの倒壊しかけたボロい家でしかない。何も知らない、分からない人と比べれば漠然とした恐怖心は無く明確な分、マシかもしれない。それと、ボクも梓さんと視た時の感じ。例えば誰かに殺されたとか凄惨な理由での自死の場合では、その意思は強いモノへと変わりやすいけど、ここの三名の最後は静かで落ち着いたものだった。理不尽な幽閉だったかもしれない。病気や衰弱で苦しかったかもしれないが、恨む対象が恐らくは家族である。不特定多数とか無差別的なものでもない。そんな印象でもあるので、だからボクは梓さんの心配の理由が全然分からなかった。
桃ちゃんは持参した軍手をはめて、スコップで小屋の中を掘り始めた。どんどんと掘り進むにつれ黒い瘴気が増えていく。しかし、桃ちゃんの湯気オーラも対抗するかのように臭気として立ち上る。まるで陰と陽が相殺しあって調和と相殺をしているみたいだった。
いくつもの遺骨が出土してくる。そして三つの髑髏が出てくると、瘴気が一つになり桃ちゃんのオーラを一部飲み込んだ。
「あ!!梓さん!」
「・・・・・・」
瘴気がどんどんと形を成して行く。髑髏が三つ、浮遊し取り込んだ桃ちゃんの力を使って霊体へと具現化した。
《あ・・・あ・ああ・・・・あ・・・・あ・・・あ》
三位一体となった霊体が・・・いや、もはやその形態は怨霊そのものの様な異様な形となり桃ちゃんを襲い掛かっている。
「千鶴さん、お一人で千里眼を維持してください!」
「は、はい!何とかやってみます!だから梓さん!桃ちゃんを、何とかしてください!!」
梓さんは何かまた別に集中しだした。
「・・・あれは・・・私の予測が間違っていました。どうやら『口減らし』ではありません。『座敷牢』の被害者のようです」
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