『クレア・タンジェンシー』

賜物

 祇園精舎・・・・・・

 シルバちゃんが熱く語り詠う。


【昔、中国の数多る皇帝が居たが、高慢に他の者の真言を聞く耳を持たず、堕落と快楽に溺れ、そして滅びゆく運命。】


【我が国も同じ。多くの天下取りが欺瞞に荒ぶる。】


 将門。源義親。藤原家・・・・・・

 平将門たいらのまさかども・・・・・・

 いや、違う・・・将門は・・・・・・



《俺は》



 ・・・武士?侍?

 着物を何重にも着た、柄杓をもった男が視える・・・・・・



《俺は騙された。長きに渡る苦汁に耐え忍び京に仕え、戻った我が国、常陸国ひたちのくには・・・・・・》



 将門・・・ボクは聞いたことがある。日本三大怨霊とされ、首塚が有名な・・・あの、将門?



《貞盛・・・あ奴・・・父上・・・・・・》



・・・・・・・




「・・・あ・・・父・・・あー・・・ぎ・・・ぎおん・・・しょうじゃ・・・の」


 ・・・え?!


「・・・え」


「・・・千鶴ちづるちゃん、いま、出た!・・・出たよ!『声』!」


「・・・あ・・・あ・・・あた・・・あた、し・・・・・・」


「おめでとうございます」


 涙で滲む先に、普段は冷静沈着な古杣ふるそまさんが琵琶を片手に立ち上がって喜んでくれている姿と、誰よりも冷静で落ち着いているシルバちゃんが正座のままこちらを見て微笑みかけている姿が見えて、溜めていた涙が零れ落ちた。

 ボクたちは三人、抱き合って喜びを分かち合った。


「根気よく頑張ってきたからだね。おめでとう」


「よかったですね」


「あ・・・ありがと・・・う」


 声はガラガラでおっさんみたいだったけど、ボクの声が戻った!やったー!!

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