第6話 思い出

「お前の両親は、電話と箱だ」


「え、父さんなんて?」


「そしてお前の本当の名前は●Phone4だ」


「本当の名前に伏せ字がついてるけど」


「今は充電しても起動しないバッテリーがパンパンに膨らんでる状態だ」


「そんな携帯電話すぐ捨てなきゃ」


「でも学生時代から使っていた思い出の携帯。捨てるに捨てられず引き出しの奥に放置されている」


「それ大事なの?大事じゃないの?」


「でも大事な思い出って、簡単に捨てられないでしょ」


「確かにそうかも。俺も未だに母さんとの思い出が忘れられないから」


「どんな思い出なの?」


「母さんは覚えてないだろうけど熱出したときに手を繋いでくれた」


「ああ、スマホ熱くなるほど使い続けた思い出ね」


「現実ではそういう解釈なの!?」


「スマホの見過ぎで仕事が進まなくて、結局残業するって思い出あったなあ」


「父さん!?」


「とにかく箱太郎、誕生日おめでとう」


「こんな事なら知りたくなかった」


「そうだ、最後にひとつ言わなきゃいけない事があった」


「えっ、まだあるの」


「実はお前は、今日が誕生日でもなければ18歳でもない」


「●Phone4は2010年6月4日発売の14歳だって」


「よく知ってるわね」


「スマホで調べたのさ。そう、この●Phone15でね!」

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箱太郎の秘密 くらんく @okclank

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