一人であの魔物を倒したとか、嘘に決まってるでしょ(笑)

「いやだから、私がレッドウルフを倒したのは本当だって。ウソなんかじゃないわよ。」


現場調査に来た委員長───ブレイジア(ESTJ)に向かって、私はありのままの情報を伝えようとした。

しかし。


「嘘はやめなさいよ!レッドウルフなんて一人で倒せる魔物じゃないわ。特に力の弱いあなたなんかが…」

「ちょ、ちょっと、もうちょっと彼女の話も聞いたほうが…」


彼女はジャックの言葉も聞かず、私に疑いの目を向けるばかりだった。


まったく、こういう時こそいつもの勢いを発揮してくれたら助かるのに。


「近くにはジャックがいたらしいじゃない。どうせ彼に守ってもらったんでしょ?」

「いや、俺は守ろうとしたんだけども…結局ルークの魔法に助けられちゃってさ。ルークの魔法、すごかったんだぞ!あの魔獣を一撃で倒して…」

「ジャック…無理して擁護してあげなくてもいいのよ。どうせルークは、また魔法でもいじってたんでしょ?」


ちょっと、そんな哀れみの目で見ないでよ。

いや、たしかに魔法はいじってたけどもさ。

ちゃんと実用的な魔法だったのよ。なんで皆、魔法の実用性に気づかないのかしら…


「それよりも、問題なのは…あの紙に書かれてた事よ。」


ブレイジアは振り返って、魔物の身体に刺さった槍を指差した。


「『……世界に一匹しか存在しないドラゴンから採った、"天龍のウロコ"だ。そのウロコには、持ち主の願いを一つだけ叶える力があるとされる』、ねぇ…」


訝しげに言う彼女に向かって、私も気になる事を質問してみた。


「それ、本当のことなの?願いを叶えるとかどうもウソ臭いんだけど…」

「…あんまり答えたくはない情報だけど、これは本当よ。天龍は『原種』のドラゴン。世界で最初に生まれた魔物だけあって、常軌を逸した力を持ってるの。」


突如出てきた原種という言葉に、私の心臓が僅かに跳ねた。

原種っていうのは、今世界に存在する魔物のプロトタイプみたいなものだ。ドラゴン系の全ての魔物の始祖であり、世界で最初に現れたドラゴン。

その原種の身体には、噂によると凄まじい力が宿っているとかどうとか。

魔法を極めたい私には、喉から手が出そうなほど欲しい一品だ。


もしも私が天龍のウロコを手に入れたら、なんて願おうかな。

例えば…徒歩一分の場所に、最高の魔法理論を学べる塾を作ってもらうとか…


そうして、妄想を膨らませていたところで。


「なぁ、ルーク…ちょっと今、時間ある~…?」


突然…ジャックが話しかけてきたのだ。

教室で会った時の威勢は無くなっており、しょぼんと頭を垂れている。


「なに?魔法をバカにしてた銃使いさん。」

「うぐっ………」

「せっかく助けてやったのに…お礼の一言も無いのかしら?」


おちょくるようにそう言ってあげたら、ジャックは一瞬ぶちギレたような表情になった。しかしすんでの所で、我に返る。

ここは大人しく従った方が良いというのが分かったんだろう。


「……そ、その節はドウモスミマセンデシタ…タスケテクレテアリガトウゴザイマス…」

「うんうん、私の魔法は?」

「……スンゴイ強い魔法デス……」


やっとこさ、私が欲しかった言葉がもらえた。

魔法をバカにするやつはこうなるんだぞ。分かったか?

私は一人で勝手に満足した。これで少しは魔法の強さが分かってもらえればいいけど。

さて、話を戻そう。


「よく言えました。それで、用件は?」

「……さっきの話、聞いた?ウロコが願いを叶えるとか、どうのこうのって話。」

「そりゃ聞いたわよ。それがどうかした?」

「…あのウロコ、すげぇよなぁ。願い事とかぜんぶ、叶えちゃうんだってさ。そんなすげぇモン…お前も、欲しくないか?」

「はぁ……?あんた、まさか……」


ジャックの言いたいことが少しずつ分かってきた。

そしてそれは恐らく───最悪なアイディアだった。


「あのウロコ、先に手に入れちまおうぜ…俺たちで組んでさ!」

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え、魔法は銃よりも弱いって?じゃあ私だけが使える最強魔法で無双します。~もしもMBTIが魔法を使える世界になったら~ メルコ @MBTI_meruko

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