第9話 ナンパされる筋肉
「ふむ、これがダンジョンゲートというやつか」
俺の視界にあるのは縦に長い渦の様なもの。
ゲートの脇には全身に鎧を纏い槍を携えた兵士らしき者が2人、あれが守衛だろう。
「あれ? お嬢さん、今からダンジョンですか?」
声のする方へ振り返ると3人の男が立っていた。
剣を携え鎧を着た赤髪、ローブを着て杖を持つ黄色髪、巨大な盾を持つ緑髪。
信号機3兄弟だろう、しらんが。
「えぇ、そうですが」
俺の返答に信号機のリーダー赤髪が微笑んで口を開く。
わからんが赤いのでリーダーだろう。
「良かったら一緒にいかない?」
「いや、赤は止まるものだ」
「へ?」
しまったつい言葉にでていたみたいだ。
アホ面をした赤髪がなんとか笑みを保とうとしている。
「私1人で大丈夫ですわ」
「いや、お嬢さん手ぶらでしょ? ダンジョン初めてなんじゃない? 危ないよ」
「いえ、私は体が武器ですので」
「体が……」
なんだ、そんなに俺の大胸筋が気になるのか?
「あっ、すみません。でもやっぱり初めてじゃ危険だよ! 保険と思って、今回だけ一緒しましょう」
「そうですか、では今回だけご一緒していただけますか?」
「「「ハイ! 喜んで!!」」」
仕方ないから今回はのってやろう、筋肉に興味を持ってくれたしな。
「俺はレッド、剣士でランクF。よろしくね」
「俺はイエロー、魔法使いのランクF。よろしく」
「俺はグリーン、タンクのランクFだ。よろしく頼む」
名前が安直すぎる。
俺の名前の様にもっといいのがあっただろうに、いやこの世界は髪の色を名前にするのがポピュラーなのかもしれんが。
「私はアイナですわ。筋肉のランクは、えーっと……Fですわね」
「筋肉?」
「えぇ、筋肉ですわ。あ、筋肉自体のランクはSですわよ」
なぜわからんという顔をするのだ、それがわからん。
まあ、とりあえず面倒な自己紹介が終わったんだ、さっさとダンジョンに行こう。
「ギルドカードの提示を」
ダンジョンゲートを潜ろうとすると守衛に止められた。
なるほど、ギルドカードを見せるんだったな。
「これで構いませんか?」
他信号機もカードを見せる。
「ありがとうございます、ではお気をつけて」
さて、ダンジョンとやらがどんなものかみてやろう。
俺たちはダンジョンゲートを
「これがダンジョンですか」
そこには先程までの石畳の街の風景とは違い、草原が広がっている。
周りにはちらほらと他の冒険者らしき人もいる。
「そう、綺麗な景色でしょ? しかし気をつけないと。ゴブリンどもが潜んでるやもしれない」
なるほど確かに背の高い草だ、小さい魔物程度であれば潜めるな。
「ひとまずあっちに行こう」
指さしたのは草原から森の様に木が生えているところ。
あっちにいい獲物がいるのか。
「わかりましたわ、案内してくださいませ」
信号機達についていく。
しかしのどかだな、ダンジョンというからもっと不穏な雰囲気のある場所だと思っていたが。
変わらぬ青空をみてボーッと歩く。
しばらくすると森に入る。
周りに気配はない、なんとつまらん場所だ。
まだ先に行かないと魔物とやらは出てこんのか。
「よしこの辺でいいだろう」
「魔物はまだ出てきてませんわよ?」
なぜこんな場所で止まるのだ。
「お嬢さんがかわいいからね、ちょっと遊ぼうとおもって」
「あら、どんな遊びかしら」
あからさまに鼻の下を伸ばし気持ち悪い笑みを向ける3人に問う。
「それはもちろん気持ちいい遊びさ」
ぐへへと涎を出しそうな勢いだ。
指も漫画かのようにうねうねさせ気持ち悪い。
「まあ! ではお兄さん達が魔物ってことですのね」
「そう、俺たちは夜の魔物さ」
「お嬢さんもダメだよ、手ぶらで見知らぬ男についてきちゃうんだから」
なるほど、コイツらの狙いはどうやら筋肉ではなく、俺の女としての体らしい。
バリバリ童貞の俺でも流石に察する。
しかし残念だが俺は卑怯な男にやられて悦ぶ漢ではない。
「嫌だ、と申しましたら?」
「力づくでも」
「そうでございますか……では、参るが良いぞ!」
ダンジョンの最初の敵は魔物ではなく変態信号機になってしまったが……さあ、筋肉の見せ場だな!
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