第5話 筋肉、街を歩く
「これは……凄い」
無事街へと繰り出した俺。
移動手段は軽トラ、ではなく馬車だった。
道は整備されていたのだが、やはり車よりは乗り心地はわるい。
距離はわからないが体感30分程で街に着いた。
街はなんというか西洋的だ。
石造りの店が立ち並び、地面も石畳が敷かれている。
「あれはなんですの?」
「あれはギルドでございます」
「ギルド?」
街の広場の中心に
これはギルドというところらしい。
なんでも冒険者がダンジョンに行く時の手続きをおこなったり、ダンジョン内のアイテムの換金等を一手に引き受けているという。
そのギルドには剣など武具を持った多くの人達が絶え間なく出入りしているのが見える。
「なぜあのような格好をしてらっしゃいますの? コスプレというやつですの?」
「コスプレ? いえあの方々が冒険者でございます」
「あれが冒険者ですか」
冒険者とは武器を装備した人をいうらしい。
そして、あれは本物らしい。
どうりでコスプレにしては本格的だと思ったのだ。
「ダンジョンとはなんですの?」
「えぇ、ダンジョンはですね――」
長々と説明され聞いたのを後悔したが、どうやらこの世界は魔物というモンスターがいる世界と繋がる場所がいくつもあるらしく、それをダンジョンと呼んでいるようだ。
その魔物のいるダンジョンに行き、ダンジョン内にある素材や魔物を倒して採れる素材を採取して生計を建てているのが冒険者というらしい。
ふむ、これはおもしろい。
「冒険者には誰でもなれますの?」
「えぇ、まあ。ギルドで登録すれば誰でもなれますわよ」
「そうですか、良い事を聞きました」
誰でもなれる、魔物という生物を倒す。
なるほど、筋肉の見せ所というわけだ。
「お嬢様? もしかして……」
そうすぐに眉を
「わかっていますわ、まだダメなのでしょう」
「え、えぇ……まだ?」
魔物の強さはわからんが、こんな軟弱な体で戦おうとは思わん。
「で、リリファ、ダンベルはどこで売ってますの?」
「ダンベル、ですか?」
「はい、ハンドグリップもあれば尚良しですわ」
「すみません、言っているものがわかりません」
「なん、だと?」
まさかとは思うがダンベルすらないというのか……いや、名前が違うのかもしれない。
「ダンベルというのは――」
ダンベルやハンドグリップがどう言うものか1から説明してやった。
流石にこれだけ言えばわかるだろう。
「すみません、わかりません」
「なん、だと?」
まさか、まさかないというのか!?
ダンベルだぞ、ハンドグリップだぞ?
筋トレの基本の基ではないか、この世界の住人は何でトレーニングをしているというのか。
「ですが、つくることは可能かもしれません」
「本当か!?」
「お嬢様」
「あ、本当ですの?」
「聞かないとわかりませんが、メシア家が懇意にしている鍛冶屋がございますのであるいは」
「行きましょう。今、すぐに行きましょう」
なんだ安心したぞ。
全く焦らせよって、筋肉も驚いて脈打っておるわ。
♢
「こういうヤツですわ」
鍛冶屋に入り、半裸のむさ苦しくも逞しいものを持ったおっさんにまた説明する。
リリファが言うにはかなり腕の良い職人らしいが。
「ふむふむ……できますよ」
「本当か!? あ、いえ本当にできますの?」
いかん、つい取り乱してしまった。
「たぶん、それぐらいなら。できたら使いに持って行かせますのでしばらくお待ちくださいませ」
「恩に着る、いえ感謝いたしますわ」
やったぞ、ダンベルとハンドグリップが手に入りそうだ。
コイツはこれからも懇意にしていきたいものだ。
もっと機材を作らせて筋肉に貢献させてやろう。
後日ピカピカに光る鉄のダンベルが到着した。
オモリの数と種類で重さを変えれる様にしてくれた、できのいいそれを見て俺の全筋肉が感動した。
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