第68話 海1

「未来〜! 早く!」


「僕はこれ立ててから行くので、先にみんなで遊んでてください!」


未来は持ってきたパラソルを持ち上げて見せながらビーチボールを持って未来を待っている3人に先に遊んでくるように言った。

欅神楽の別荘の前は半分プライベートビーチのようになっており、人はいるのだが多いわけでは無いのですぐに見つけて合流できるだろうと思っての事だ。


もう少し先にある海の家が固まっている方だと人が多いので逸れてしまいそうなので待っていてもらった方が良いのだろうがその心配はなさそうである。


「わかったわ未来、ありがとう。でも、早く準備してきてよね!」


「それじゃ、妃ちゃん、パース!」


「それじゃあ未来君、よろしくお願いしますね」


先に行く事になった途端、虹花が少し先に走って行って、手を広げて妃子にそう叫んだ。


虹花は昨日から沢山遊んで陸上部の部活焼けを消すと言って張り切っている。


3人を見送りながら、未来はレジャーシートを敷いてパラソルを立てていく。


砂浜にパラソルを刺すのも、ダンジョンで力があがっている未来は早く終わりそうだ。


クーラーボックスに飲み物は入っているし、熱中症にならない為の休息場所はすぐに完成した。


完成した事に満足して未来が「よし」と言いながらパラソルを満足そうに見る。


未来が3人に合流する為に海の方へ向かうと、3人は楽しそうにボールを投げ合っている。


未来は、こういう時にどうやって声をかけていいのか分からずに、楽しそうに遊ぶ3人を少し離れた所で見ていた。


こうして外から3人の遊ぶ姿を見ているのは、面と向かって水着を見るよりも、落ち着いて3人の水着姿を見る事ができ、今の状況が幸せな事だと感じると同時に、本当に、ここに居るのが自分でいいのかとも考えてしまう。


ビーチボールが、風に揺られて浮き上がり、キャッチし損ねた為に未来の方まで飛んできた。


「あ、未来君、パラソル終わったんですね。ありがとうございます」


ボールを取り損ねた悠里がボールを取りに来た事で、3人が未来の存在に気づいた。


「未来ん! 早く一緒にやろーよ!」


「未来、そこで見てたの? 声かけてくれればいいのに」


妃子の言葉はもっともなのだが、未来は苦笑いで言い訳を口にする。


「楽しそうにしてたから今邪魔するのはまずいかなと思って」


未来の言葉に、未来の性格を分かっている3人もやれやれと言った様子で苦笑いである。


「それじゃあ次は未来君も一緒にしましょうね」


悠里がそう言いながら転がったビーチボールを拾おうとすると、いつもの服と違い水着なので胸の谷間がよく見えてしまう。


悠里も、胸の大きい虹花と比べてコンプレックスを抱いているだけで0ではないのだ。


「あー! 未来ん悠里の胸に見惚れてるー!」


未来も男なので、気になってしまったのだが、それを虹花にバラされてしまった。


「え、あの、違——」


「わ、私の胸なんて見ても大きくないですよ! 虹花の方が大きくて見応えがありますし、私なんか水着も胸が大きく見えるものではありませんから!」


未来が弁解をしようとするが、それよりも大きな声で悠里が動揺したように何故か謙遜をする。


確かに、悠里の水着はオフショルなので、妃子のホルターネックや虹花のクロスホルターのように寄せて上げる効果は少ないのだが、今の話はそういう問題ではなかった。


その悠里の動揺する姿を見て虹花は楽しそうに笑っており、妃子は悠里とそこまで変わらない自分の胸を触って「私のこれでもいけるか?」などと呟いている。


「ほ、ほら、みんなで遊びますよ! ……未来君のエッチ……早くいきましょう!」


恥ずかしさの限界を変えたようで、悠里が無かったことにしようとして話を逸らし、恥ずかしそうに未来にクレームを呟いてボールをもって先に妃子と虹花の所へ向かう。


その悠里の顔が少し嬉しそうなのだが、後ろにいる未来には見えないのであった。


「ちょっと。今のはそうじゃなくて!」


未来は3人に今からでも弁解しようとするのだが、3人はそこまで深刻に考えている訳ではない為、未来は早々にあしらわれてしまうのであった。

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