第67話 海へ

「うぅ〜。みんなズルいよぅ」


「別にずるくはないと思うけど。私達の方が早く終わっただけだし」


「そうなんだけどさぁ」


「お昼までに終わらせないと海に行くの遅くなっちゃうよ?」


「未来〜ん、助けてぇ、教えて〜」


別荘のリビングで、虹花が1人ノートに向かって唸っていた。


今日は昼から海に行く事にして、朝は夏休みの宿題を消化する時間に当てていた。


リビングテーブルを囲んで、少し話をしながら宿題を進めていたのだが、話に夢中になっていた虹花は宿題がまだ終わっていなかった。


元々、妃子と悠里は秀才であるし、未来はステータスのお陰で学年一位になっている。

虹花以外の3人は、喋っていてもサクッと宿題を終わらせてしまったのであった。


「ここは、これを使ってですね」


「これを、こう? おお! 未来ん分かりやすい!」


未来のサポートを受けて虹花の宿題のスピードも上がっていた。


「でも、さっきの続きだけど昨日のイルカショー凄かったよね! テレビとかでも見た事があったけどさ、あんなに高く飛ぶんだね!」


「それにしても飛びすぎだった気はするけどね、真ん中の1匹だけ倍くらい飛んでたから。ってほら、虹花また手が止まってるよ?」


「ああ、ごめんごめん」


話が楽しいのか、一問解くごとに話に夢中になってしまう虹花に、他の3人は苦笑いである。


しかし、お昼まではまだ時間はあるし、今日宿題を終わらせないといけないわけではない。

虹花の様子を微笑ましく見守りながら、朝の時間は過ぎていくのであった。



「やっとお昼だ! 早く海に行こう!」


お昼過ぎ、いち早く水着に着替えた虹花が、麦わら帽子をかぶって、玄関から準備万端の様子で叫んだ。


「僕も準備できました。クーラーボックスの中も朝準備したからいい具合に冷えてますよ」


未来も水着を履いて、薄手のパーカーを来て、リビングからクーラーボックスを背負って玄関の虹花と合流する。


「お待たせ。未来君、荷物ありがとう」


「未来は日焼け止めちゃんと塗った? 持ってなかったら私の貸してあげようか?」


「大丈夫です……」


全員集合ささたので、これから別荘からすぐのところにある海へみんなで向かう。


「未来ん、ちゃんと見て水着を褒めてあげないと、男として原点だよ〜」


3人と目を合わせずに、視線を彷徨わせる未来を見て、虹花がニヤニヤとしながら指摘をした。


試着の時と違って未来と同じようにパーカーなど羽織っているものの、普段の服装と違って露出が多く特別な雰囲気に、未来は照れてしまっているのである。


「3人とも、とても、かわいいです……」


指摘を受けて、恥ずかしそうにしながらも未来は3人を見て感想を言った。


改めてちゃんと見られると思うと、妃子も悠里も見てほしいと思いつつも、少し恥ずかしく思って顔を赤らめてしまう。


虹花も、見意識に未来は妃子と悠里の2人を見ると考えていたせいで、自分も褒められた事で不意打ちを食らったように恥ずかしくなり、無言になってしまった。


「ほ、ほら。いい天気ですし早くいきましょう!」


気まずくなりすぎる前に、未来が声を発してドアを開ける。


「そうね! 早くいきましょう!」


「うわあ、眩しい! ほら、悠里も早く!」


「う、うん」


こうして未来達は別荘近くの浜へと向かった。



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