第49話 ショッピングモール《披露》
妃子や悠里、虹花が自分達できちんと選んだ水着を試着室で着替えているのを未来は試着室の前の椅子で待っている。
今度は虹花の悪戯は無いので3人が水着に着替えて目の前に現れる事になる。
未来は今日の3人の私服姿でも眼福であったのに、今から更に肌の露出の多い水着を見せてもらえる事に心臓が口から出そうな程に緊張していた。
この状況を学校の誰かに見られたら背後から刺されても文句は言えないのではないかと思ってしまう程であった。
試着室での布が擦れる音が止まり、虹花の確認するような声が聞こえる。
「それじゃみんな着替え終わった? 未来んがコメントを言いやすいように順番にカーテンを開けましょうか?」
未来はその言葉でいよいよという思いで生唾を飲み込んだ。
「あ、私から! 私からいいかな?」
そして、初めに名乗り出たのは意外にも悠里であった。
「お、悠里やる気だねえ」
「そんなんじゃないから! 虹花の後が嫌なだけだから!」
「確かに! 悠里の次は私が見せるから!」
悠里の言葉の意味を理解した妃子が慌てて次に名乗りを上げた。
悠里が最初に名乗り出たのは虹花の後だとどうしても胸を比べられると思ったからであった。
悠里は普段から虹花と自分胸の大きさを比べて劣等感を感じていた。
なので、虹花の後は避けたいと未来に見せる恥ずかしい気持ちで出遅れてしまう前に名乗りであのであった。
その事に妃子は気づいて慌てたのだが、未来はそんな事に気づく事なく、緊張で顔を引き攣らせていた。
「それじゃ、日和君いくね」
「は、はい!」
未来の返事を聞いて悠里の試着室のカーテンがゆっくりと開いた。
初めに名乗り出たのにやはり恥ずかしさは拭えなかったのか、悠里は開けたカーテンを握りしめながら不安そうな顔で未来を見る。
「……どうかな?」
悠里の水着は淡い藤色のフリルのオフショルビキニであった。
柔らかい感じが悠里の雰囲気に似合っているが、ボトムの部分にはフリルがなく、サイドは紐で結んであり、少し肌が見えている攻めた物であった。
「か、可愛いです」
未来の口から溢れように発せられた言葉は心からのものであった。
高校生男子に評論家のような語彙力を求めてはいけない。
「あ、ありがと」
悠里の嬉しそうに微笑みながら恥ずかしそうに言った言葉の後すぐに、隣の試着室のカーテンが勢いよく開いた。
「次は私よ! どう、未来?」
未来と悠里の間にいい雰囲気が漂ったのを察したのか妃子が割り込むようにして未来に質問する。
その様子が聞こえたのか虹花の居る試着室から楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
妃子の水着は黒のホルターネックのワンピース水着なのだが、首から胸元の辺りや腰周り、背中がシースルーの素材でできていて肌が透けて見える物であった。
黒いオーガンジー生地に透ける妃子の白い肌が、普通に肌を見せているよりもセクシーに感じさせる。
「妃子先輩はなんか、すごい、綺麗です……」
2人の水着を見比べて感想を言う未来は鼻の下が伸びるのを必死に堪えて真面目な顔を取り繕っている。
未来の短い褒め言葉を聞いた妃子は満足そうに頷いた。
当然と言いたそうにしているが、口角が緩んでピクピクと震えている。
「ねー、それじゃあ私も開けていい?」
妃子のように焦れてしまいカーテンを開けるのではなく、虹花が質問をした。
「ええ……」
「いいわよ……」
まるで強敵でも現れるかなように、未来ではなく妃子と悠里が返事をした。
カーテンを開けて出て来た虹花は、セクシーとは少し違う、クラスホルターのビキニにジーパン生地のショーパンを合わせたスポーティな水着姿であった。
「どう? 似合う?」
回って水着を見せる虹花に妃子と悠里は何かいいたそうである。
2人に大分過激な水着を勧めておきながら自分は意外と普通の水着しか来ていない事に色々と言いたいところであろう。
なんなら、先程の過激な水着があったから2人とも少し攻めた水着をえらんだのだから。
「うん。元気な雰囲気がイメージに合ってると思うよ」
未来は、水着姿なのだが悠里と妃子の後だからなのか、落ち着いて感想をいう事ができた。
悠里と妃子は少し納得がいってないみたいだが、無事水着を選び終える事ができたのであった。
「さーて、水着も買った事だし、コーヒーショップでお茶でもしよっか!」
未来もサクッと水着を購入した後に虹花が提案した。
「え、もう?」
未来は先ほどお昼を食べた後なのにと疑問の声を上げた。
それを聞いた虹花は未来にチッチッチと人差し指を振った。
「未来ん、水着を選ぶ前なんだから女子はお腹のぽっこりを気にしてあんまり食べてないんだぜぃ。未来んもこういう気を遣えないと妃ちゃんも悠里も逃す事になるから覚えときにゃい!」
「うん。分かった」
未来はせっかくできた友達が居なくなるのは嫌だと思って真剣な様子で返事をした。
しかし、本当の意味で虹花の言葉を理解してなさそうな返事の歯切れの良さに虹花は苦笑いである。
妃子と悠里は、虹花の言葉には何も反応する事なく、コーヒーショップへ行く事に賛成の意見を返す。
小腹を満たす為、4人は次にコーヒーショップを目指すのであった。
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