第47話 ショッピングモール

「うーん……」


「あの、どうしたんですか……妃子先輩?」


 未来達が電車に乗って、目的の大型ショッピングモールへついてすぐ、妃子が未来の服装を見て唸っていた。


「やっぱり未来の服装はバランスが悪いのよね」


 分かってはいたが、確認するように言われるとグサリとくるものがある。


 未来の服装はポロシャツにカーゴパンツであった。

 中学生の頃に買ったものなので、よく言えば幼さ。いや、オブラートに包むのはやめよう。

 アクセサリーの類もつけず、上下の服のサイズのアンバランスさが目立つ格好は中学生感が丸出しのコーディネートであった。


『ダサい』


 この一言を、女子3人は言わないようにしてここまで来たのである。


「未来は足も細いんだし背もそこそこ高いんだからシンプルな感じでもカッコいいと思うのよ細めのジーンズでキレイめな感じかどう?」


「それもありですね。未来んが悠里を守ったって聞いた時には驚いた位華奢だし……えい! あっ! 意外と筋肉ある!」


「え!」


「虹花、何してるのよ!」


 話の流れで、虹花が確認するように未来のポロシャツを捲り上げてお腹を確認した。

 ダンジョンに通い始めてから、うっすらと筋が分かる位には筋肉がついている。とはいっても、きちんと部活で鍛えているような生徒ほどではないのだが、だらしなさは感じない。


 虹花の急な行動に未来は驚いて、悠里は虹花の行動を咎めた。

 その横で、妃子は何も言わずに未来のお腹をじっと見て「ほう」と小さな声を呟いた。


「にゃはは! 未来ん、夏だからクロップドパンツも良いかもね。 シャツもポロシャツじゃなくてシンプルなTシャツがいいかなぁ」


「もう、虹花ったら。でも、クロップドパンツならロング丈のカッターシャツを合わせてもいいし、Tシャツの上から重ねても良いかも」


 ごめんごめんとジェスチャーしながら笑って誤魔化しながら服の提案をする虹花の提案を呆れた様子を出しながらも悠里が追加のコーディネートを補足した。


「ちょっと待って、どれも素敵なんだろうけど僕そんなにお金持ってないから!」


 女子3人が未来の服について話し込む中で未来は慌てて予算の話をした。

 お小遣いはもらって来ているが、提案される物を全て買えるような額ではない。


 水着も買わないといけないし、この後のお昼などの予算もある。


「安心しなさい! 未来の今日の予算はここにあるわ!」


 未来の言葉を否定して、妃子が見せつけるようにクレジットカードを見せつけた。


「未来の服はこのカードで払うわ! この前のお礼と未来のこれまでのお給料が入っているわ!」


 妃子は少し言葉を濁したが、この前の事とはダンジョンから妃子を助け出した事だろう。

 それ以前に、初めに妃子の護衛の話をした時にお給料の話をされたが、トラブルもなくただ友達と登下校するだけの話なので断っているはずである。


「未来、パパもママもとっても感謝してるのよ。これくらい受け取りなさい。未来のお母さんにも話はしてあるみたいだから」


 周りに人が居るから言葉を濁したが、事情を知っている悠里と虹花はうんうんと頷いている。

 それに、親が納得していて外堀は埋められているようであった。


「わ、分かりました」


「それじゃ、服を見て回るわよ!」


 その後、未来は言われるがままに3人に服を選んで貰った。


 その内の一つに既に着替えているが、先程までとは違って大人っぽい雰囲気がでている。


 本日の服装は、未来の知らない所で行われたジャンケンの結果、妃子の選んだ細めのジーンズにシンプルな筆記体のブランドロゴが胸にある七分袖のシャツであった。


「さて、未来の服も買ったし、お昼を食べたら未来お待ちかねの水着を選びに行くわよ!」


「わー、未来んのスケベー!」


「え、エッチ……」


 未来を揶揄うように、3人がジト目で未来の方を見る。


「ちょっ、その言い方は——」


「なに? 楽しみじゃないの?」


「その聞き方はずるいですって!」


「ふふふ、ごめんごめん。さて、何を食べよっか?」


「そうですね! ほら、あそこに案内がありますよ! 何を食べます?」


 未来は妃この言葉を聞いて、話題を晒すように食事の専門店街の案内ボードを指差した。


 未来が楽しみにしていてくれそうな雰囲気が分かったので妃子と悠里が嬉しそうに顔を綻ばせたのを見て虹花はニヨニヨとしながら2人に何かを耳打ちすると、妃子と悠里の顔が真っ赤に染まる。


「さあ、悠里ちゃん、未来を追いかけないと見失うわ!」


「そ、そうですよね! 妃子先輩!」


 未来が見に行った案内ボードまで見失う距離ではないのだが慌てて未来を追いかける2人の後ろを、楽しそうに虹花も追いかけ、4人はお昼を食べに移動するのであった。






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