第38話 新ジャンル

 ダンジョンを進む未来は、次に現れたゴブリンの集団の武器を見て後ろに飛び退いた。


 なんでこんなときにこうも新しい事が重なるんだよ!


 未来は心の中で舌打ちをしてこの後にどう動けばいいのかを考えた。


 しかし、迷っている暇はないと無いと頭を切り替えてすぐさまゴブリン達の懐に飛び込むようにして距離を詰める。


 ゴブリン達の持つ武器に対して距離をとるのは悪手だと判断したのである。


 未来は、その武器が使われる前に一足飛びに近づくとゴブリン達を倒していく。


 経験上、一番先に倒さなければいけないモンスターは赤色である為、先に赤色のゴブリンを狙って倒しきった。


 そして、残るゴブリンを倒す為に次の行動へ移ろうとした時『パン』と乾いた音がダンジョンの中に響いた。


 ゴブリン達が新しく持っていた武器である《銃》の引き金が引かれたのだ。


 未来の知らない事であるが、その銃は自衛隊が使っている物に酷似している。


 そもそも、何故今になってゴブリン達は複数体現れるようになったのか。

 そして、ランキング表示にない新しい武器を使うようになったのか。


 それはダンジョンが人の体と同じようなシステムで運用されているからであった。


 人の体は足りないと感じた時にそれを補う力が備わっている。

 その時に補うついでに強く強化して次に備えて予防をする。


 筋トレをして筋組織が破壊されれば治すついでにより協力な筋肉に。

 洗顔で油を取ってしまえばより多くの油を出して脂肌に。

 病気に一度かかれば2度目に免疫ができてかかりにくくなるのも同じである。


 それを利用したものが予防接種であり、あらかじめわざと少量の病原菌を入れてしまう事で大きな病にかかる事を予防するのである。


 つまり、地球にとって未来が予防接種であり、未来に合わせてダンジョンの免疫モンスターを作った。


 そして、ダンジョンの門が開き、自衛隊等がダンジョンへ入ってモンスターを倒した事で、それに抵抗する為にモンスターの数が増え、ゴブリンの持つ武器も自衛隊の使った物に合わせて増えたという事であった。


 ただ、その人の体に近い地球ダンジョンのシステムは、未来にとって嬉しい誤算もあった。


 筋肉が放っておけば衰えるように。


 ここ数週間、未来がダンジョンへと入らなかった事で、モンスターの強さは弱体化しているのである。


 乾燥する唇をリップクリームで補いすぎると補う必要がないと体が判断してしまい、より乾燥がひどくなる様に、自衛隊や各国の軍の力に合わせたモンスターの能力は数が多くとも未来の敵ではない。


 ゴブリンが発砲した銃弾は、未来の《魔力(物防)》に弾かれてしまう。



「銃でも赤いのさえいなければ問題ないのか……」


 初めての対銃に避けることができなかった未来は自分の無傷な体を見て苦笑いを浮かべる。


 しかし、逆に考えれば銃と戦っても赤いモンスターにさえ気をつけていれば妃子の元へ早く辿り着くことができる。


 その後は、銃を持ったモンスターを手早く片付け、未来は目的の方向へとまた走り出すのであった。


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