第37話 ダンジョンへ

 未来は妃子の母親の話を聞いて、急いで家から飛び出した。


 自分の家族には何も言っていないが、そんな事は後からでもどうにでもなる。


 妃子の母親が伝えてくれた事。


 それは妃子が第二陣としてダンジョン探索に連れて行かれたという話であった。


 ゲーム等で、1人いれば生存率が上がり重宝する役職それが《ヒーラー》である。


 政府の人間に妃子の《魔力(回復)》が目をつけられていたのだ。


 スキルは秘密にするような風潮は無く、学校で話題になっていたし、その話の中に妃子の名前も上がっていた事から質問されて答えたのだろう。

 それを、どこかから政府は掴んで来たのであろう。


 勿論、ただスキルがバレただけでは召集されても断ればいい。


 それを、欅神楽家を訪れた防衛省の役人は妃子の父親の話を持ち出して脅してきたのだ。


 この地域では、妃子の父親が元マフィアの人間だが人情にあつく、地域に貢献して治安が良くなったお陰で受け入れられている。


 しかし、全国で言うと国会議員の旦那がマフィアというのはスキャンダルの種である。

 今までは、情報操作によってマスコミを抑えてきた。


 しかし、味方のはずであった議員が、その事実を人質として持ち出してきたのだ。


 妃子の母親は、家族に迷惑をかけるくらいなら議員を辞職するつもりであった。


 しかし、相手は妃子の父親を海外に売る話まで持ち出してきた。

 妃子の父親はイギリスのマフィアのボスの息子であった。

 今は兄がボスを着いでいるそうだが妃子の父親が日本人と結婚するに当たって相当揉めたらしい。


 兄より優秀な弟をボスにすべきじゃないのかという話だ。


 最終的に妃子の父親が国籍を変え、イギリスに戻らない、ファミリーに関わらないと言う事で今の欅神楽家がある。


 しかし妃子の父親の兄は今だに自分の地位を取られるのではないかと心配しているらしい。


 両親を人質に取られた妃子は、自らダンジョン探索へ行く決意をして、防衛省の役人と出て行ったらしい。


 先程未来が見ていたニュースの速報で、セカンドダンジョンアタック開始という話が流れていた。


 妃子の父親達はダンジョンの門へ抗議しに行っているらしいがあのニュースの内容では上手く言ってないのだろう。


「ゲートイン」


 未来はいつもの公園からダンジョンへと入った。


 ダンジョン内に電波は届かないので先程地図アプリをスクショした画像で門のある位置を確認する。


「こっちか!」


 剣を引き抜き、再び未来は走り出す。

 ダンジョンは、地球の体なのだから全てが繋がっているはずである。


 そう予想した未来は、ダンジョン内から、妃子の元へと急ぐ。



「クソ、やっぱり奥に行くと難易度が上がるのか?」


 未来の進む先を複数のゴブリン達が阻んでくる。


 これまで1対1しか経験した事のない未来は慎重に成らざるをえない状況に舌打ちした。


 過去の経験から急いで自分がやられてはいけないと分かっているからである。


 未来は慎重にゴブリン達を迎えうったのだが、その結果はあっさりとしたものであった。


「あれ? 弱くなってる? いや、今は考えている時間はない。急がないと!」


 ゴブリンを倒した未来は、再び妃子が居るであろう千代田区の門の方向へ走り出したのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る