第36話 お願い
未来は学校から家に帰って来て、疲れた様子でリビングのソファへと座った。
疲れの原因は帰り道での会話である。
今日の帰り道は妃子と悠里意外に虹花も一緒であった。
夏休み前の期末のテスト期間で部活が休みな為である。
そしてこのメンバーが集まれば、最近は夏休みの旅行の話になる事が多い。
「やっと部活が休みの休日がやってくるよ! 悠里、新しい水着買いに行こう!」
「虹花、一応テスト期間なのよ? 勉強はいいの?」
休みの日の予定を提案する為に手を挙げて話をする虹花に、悠里はジト目で質問をした。
「や〜ん。慌てて土日に頑張っても変わらないって。ちゃんと勉強は夜にするしさ! 妃子ちゃんも一緒に買いに行こうよぅ!」
「いいわね。しばらく海に行ってなかったから私も新しい水着が欲しいのよ!」
誘われた妃子は、乗り気でオッケーとジェスチャーをしながら答えた。
「それじゃ未来、次の休みの予定空けといてね!」
「ええ⁉︎、僕も行くんですか?」
男には入れない会話だと思って一歩離れた所から見守っていた未来であったが、妃子の発言によって会話に入れられてしまった。
「未来ん役得だよー? 好みの水着を妃子ちゃんや悠里に着せられるかも! あんなのやこんなの。セクシーなやつもぉ」
虹花が悪ノリして揶揄うようにコノコノと肘で未来の脇を
「あー、未来んのえっちぃ!」
飛んだ風評被害であるが、未来は慣れていない為どう反応すればいいのか分からずアタフタするしかなかった。
「あの、えっと、妃子先輩、僕も行かないと行けないんですか?」
困った未来は未来を誘った妃子に助けを求めるように言った。
「当たり前でしょ? 未来は私と悠里の護衛をしないとね!」
「日和君は私達と出かけるのは嫌なんですか?」
妃子に来るのが当たり前と助けを求めた言葉をは跳ね除けられてしまい、それどころか、何故かそっぽを向いた悠里さえも顔だけ未来の方へ向いて断ろうとする未来を責めた。
「分かりましたよ。行きたいです! 一緒に行きますから!」
そうして未来も次の休みに一緒に買い物に行く事になったのだ。
いつセクハラと言われてもおかしくない状況にハラハラとした気疲れが、ソファに座ってどっと出た感じであった。
その後、夕食を食べ終えて、ゆっくりテレビを見ていると、家のインターホンが鳴った。
「未来、お母さん洗い物してるから出てくれる?」
「はーい」
キッチンに行ってインターホンに出るよりも、玄関に行った方が早いので未来は玄関のドアを開けて来客に対応した。
この時間なら近所の人の回覧板か何かだろうと考えていたのだが、ドアの前で待っていたのは妃子の母親であった。
「未来君、あなたにこんな事を言うのは間違ってるって分かってる。護衛なんて形式だけの物であの子が友達と仲良くできたらそれでよかったの。でも、お願い。あの子を、妃子を助けて。あなたはうちの護衛より強いんでしょう? お願いよ……」
悲痛な顔をして、妃子の母親は縋り付くように未来の両腕を掴んだ。
「いったい何があったんですか?」
その後、未来は妃子の母親の話を聞いて家を飛び出すのであった。
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