第27話 変化
「悠里ちゃーん。あれは一体どう言う事なのかにゃーん」
翌日、未来や妃子と一緒に登校した悠里は教室に荷物を置いた後、トイレを済ませ手を洗っていると、背後から胸を揉むように虹花に声をかけられて質問された。
「きゃっ! もう、虹花!」
悠里は虹花の行動に苦情を入れると、虹花はニシシと笑いながら胸から手を離すと片手を顔の前に出してごめんなさいのジェスチャーを取った。
「ごめんごめん! これも悠里の成長の確認だよ。まぁ、成長という成長は見られないけどねぇ」
虹花の言いように悠里はじと目で虹花を睨みながら濡れた手で触れないようにしながらも胸を隠した。
胸が大きい訳ではないが、人並み程度にはあるはずである。
欅神楽先輩よりは。となぜか妃子とを頭に思い浮かべたが、口に出すとまた揶揄われそうなので口には出さなかった。
実際妃子と比べてどっこいなので、それよりも胸の大きな虹花に抗議してもどんぐりの背比べと言われただろうし、引き合いに出したのが妃子だった事の方が質問攻めにあっただろう。
悠里は話題を変えるためにため息を吐いて話を戻す事にした。
「それで、あれって?」
「そうそう。悠里今朝日和君と登校して来たじゃない? どうなってんのか教えなさいよ!」
未来と2人ではなく妃子も一緒であったが、虹花は揶揄う為にわざと未来だけを言ったのだろう。
「日和君だけじゃなくて先輩も一緒だったし、それに、色々と事情もあるのよ」
悠里は昨日起こった事を虹花に話した。
「嘘、それ激ヤバじゃない。私にも相談しなさいよ。一緒に帰るくらいはできたんだからさ! 日和君みたいに助けはできなかっただろうけどさ。 でも意外だね、日和くん護身術とかできたんだ。人は見かけによらないねえ。どう、悠里、惚れた?」
悠里は虹花の言葉に昨日の事を思い出して少し頬を赤く染めた。
あの瞬間、自分を守ってくれた未来を思い出すとカッコよかったと感じる。
「お? これは? 日和君を振っちゃったこと後悔してる?」
「そんなんじゃないわよ。あの時は日和くんの事全く知らなかったしもう一度同じ事が起こっても返事は同じだよ。ほら、虹花、教室戻るよ」
カッコいいとは思った。でもこれは恋心ではない。
悠里はそう自分に言い聞かせて教室に戻って行くのであった。
1限目の授業が始まり、未来は授業を聞きながらぼうっと考え事をしていた。
昨日の事があったので井尻に絡まれたりするのではないかと思っていたが、井尻は今日は欠席であった。
騒ぎになるよりは良かったのかな。などと考えていると、未来の目の前に液晶の様なステータスウィンドウがいきなり出現した。
未来は声を上げそうになるのを必死に堪えて周りを確認した。
教師からは未来の目の前のステータスウィンドウが見えるはずだが、何も言わないところを見るとこれは未来にしか見えていないのであろう。
この画面は初めてゴブリンを倒した時などに見た事があるがダンジョン外で見るのは初めて出会った。
ステータスウィンドウに表示された文字を未来は確認をする。
『β版終了のお知らせ。これより正式版へのアップデートを行います』
β版? 今まで何かあった時に教えてくれる機能しか無かったけど不完全だったのか?
未来はその文字を見て色々と考えていると画面が切り替わっていく。
『アップデート中……』
『complete』
完了の文字が表示され、どうなったのだろうかと未来が確認をしようとした時、教室が急にざわつきだした。
「おい、なんだよこれ!」
「画面?」
「お前にも見えんの?」
「いや、俺は俺の目の前に」
騒ぎの様子を聞いているとクラス全員、それに教師の目の前にステータスウィンドウが見えているようであった。
「日和くんも見えてる?」
未来の前の席の悠里がそう言って話しかけてきた。
「うん。全員見えてるみたいだね」
未来は悠里の質問に答えて予想を口にした。
何も表示のない水色半透明のモニターに文字が表示され始め、それによって生徒達の騒ぐ声は大きくなっていく。
『開門まで7日、開門を記念して抽選で10億のスキルのプレゼントを行います』
モニターには当選者には三日後にスキル付与が行われると書かれており、それを見た特に男子生徒のテンションは鰻登りであった。
「10億なら当たるんじゃない?」
「どの位の確率なんだよこれ!」
「世界100億人だろ? 10%なんじゃない?」
教師まで話に混ざっており授業が続けられる状況ではない。
隣のクラス、他の学年、学校外でも同じ様な状況であろう。
自分達にはあまり関係ないと思っていたダンジョンという非現実が急に現実味をおびたのだ。
結局この日は授業ができるような状況では無くなり、教師達が今後の対応を決めるために全ての授業が自習となった。
教師が居ないのをいい事に教室を抜け出し他のクラスの友達と憶測や考察で盛り上がる生徒も多い。
未来は落ち着いたものかと思いきや、自習になってすぐに妃子に呼び出され、いつもの屋上前の踊り場へ向かったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます