第28話 驚き

「なんでまた1人増えてるのよ」


 メッセージアプリで妃子から連絡を受けとった未来がいつもの屋上前の踊り場にやって来たのを見て妃子がそう呟いた。


 悠里を連れて来るのは予想できたが、もう1人、虹花を連れてきたのを見て妃子はジト目で未来を見る。


 井尻が学校に来ていないので未来は1人で来るつもりだった。

 未来が教室を出て行こうとした時に悠里の席の近くに話に来ていた虹花がめざとく話しかけて、面白がってついて来たのだが、妃子の知らない事である。


「まあいいわ。それより、この画面について話しましょう」


 妃子は来てしまったものは仕方がないと、ため息を吐いた後に自分の前の何もない場所を指差しながら言った。


 未来が呼び出される少し前、ステータスウィンドウには新しいメッセージが表示されている。


 それまでのスキルの抽選の話についてもそうだが、今回のメッセージに関してもメッセージの送信者であろう《地球》はすべて人がダンジョンへ入る事を望んでいるように思える。


 メッセージの内容はこうだ。


『1週間後の開門に合わせて一ヶ月間のビギナーズカップを開催致します。 通常のランキングとは別にビギナーズランキングの集計を行い、ランキング上位入賞者と地球が選ぶハイパフォーマーには賞品を付与します』


 といったものであった。


 未来、妃子、悠里、虹花の4人は階段に並んで座りながら手探りにステータスウィンドウを触りながら色々な意見を出しながら話し合っている。


 ステータスウィンドウの触り心地はスマホのような物で手でスクロールやスワイプをして切り替える機能があった。


 その中にランキングという項目があり、トップページに総合ランキング。そして切り替えられるようになっており、《剣、槍、槌、斧》という4つのジャンル別ランキングが集計前という表示になっている。


 更にそのランキングは日間、週間、月間、年間と細分化されて切り替えられるようになっていた。


「今の所、日本は一般人は入場できないみたいですけどこれからはどうなんですか? 欅神楽先輩」


 画面を眺めていた虹花が妃子に質問した。


「知らないわよ。今頃臨時で話し合いしてるんじゃない?」


「そっかー。先輩でも分からないのか」


 その様子を、未来は不思議そうに見ていた。

 妃子に質問した所で分からない事なのは当たり前だと思ったからである。

 その未来の雰囲気を見て、分かっていない事を察したのか虹花は驚いた様子で未来に話しかける。


「まさかだけど日和君、欅神楽先輩のお母さんの事は知らないなんて事はないよね?」


 虹花の質問に未来は首を傾げた。妃子の母親にはあった事があるが、特別なものではなかった。


「え? ほんとに? 欅神楽先輩のお母さんは国会議員じゃない」


「多分未来はママよりもパパの方が印象的だっただろうからねえ」


「えー、それでもー!」


 未来は気づいていなかったようだが妃子の母親は国会議員であった。

 未来が見た事があるように感じたのも妃子に似ているからではなくテレビなどで見た事があったからだろう。


 妃子の父親は結婚するにあたり、実家の肩書が邪魔になったので縁を切って日本に来たのだが、その話は長くなるので今は置いておこう。


 結局、これからどうなるのかは分からないので、ステータスウィンドウに表示される事は暇つぶしの話題にするしかないのである。


 こんな風になったら面白い。こんな風になったら嫌だなど、たわいない会話をしながら学校が終わる時間までの時間は過ぎていくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る