第12話 会いに来た少女
未来の学校生活はとても肩身の狭い物になっている。
例の出来事で友達も居なくなり、窓際係長のように自分の席で誰とも関わることもない。
流石に便所飯とまではいかないまでも、腫れ物を扱うような扱いだ。
未来の事を虐めの加害者だと敬遠する人は少ないが、一部の過激なクラスメイトに目をつけられたくないといった思いから関わらない方がいい存在といった所であろう。
友達でなく用もなければ、無理に話しかける必要はない。
「日和君、提出物今日までなんだけどできてる?」
そんな中、以前と変わらない様子で接してくれる数少ない人物の1人が高宮悠里。未来が告白してフラれた女子生徒であった。
悠里が言った「虐めと思ってないし気にしていない」という言葉通り、これまでと変わる事なく、普通のクラスメイトとして必要があれば話しかけてくれる。
未来としてはフラれたわけだから少し気まずいし、本当になんとも思ってない事が分かるので悲しくなるのだが、虐めにならなかっただけいいのである。
「高宮さん、ありがとう。これ」
未来からプリントを受け取ると、悠里は名前が書いてあるかの確認をして、未来に一言声をかけると去って行った。
ほとんどのクラスメイトはその出来事を気にする様子はないが、井尻のグループが、未来を睨んでいるので未来はサッと目を逸らした。
前回の事で絡まれても被害はないと予想できるが、問題は少ない方がいい。
例えばまた絡まれて反撃したとして、暴力沙汰になれば最悪退学。せっかく授業もわかるようになって来たのだからトラブルは少ない方がいい。関わらないのが一番なのである。
そうして休み時間、午前の授業も全て終わり、昼休みに入った。
未来は教室でご飯を食べるのが気まずいので、人気の少ない場所に移動してご飯を食べている。
未来が弁当をもって席から立ち上がった時、教室の入り口が騒がしくなった。
「やっと見つけた」
教室の入り口でそう話した少女は教室の中に入って来ると、そのまままっすぐ未来の前までやって来た。
「今からお昼?」
少女は未来が手に持った弁当を指差しながらそう質問した。
「あ、うん」
「それじゃ、一緒に食べましょう」
「え?」
「ダメなの?」
「いや、ダメじゃありませんけど……」
未来に声をかけて来たのは、先日未来が暴漢から助けた(と、未来は思っている)金髪の少女であった。
少女の前回会った時とは違った威圧感に、未来は変なイントネーションになりながら返事をした。
「それじゃ、行くわよ」
少女と一緒に、未来は教室を出て行った。
「あれって、三年の
「ああ。なんで日和を?」
教室が訪問者の話題で盛り上がる中、同じように盛り上がるグループがあった。
「先輩達も虐めの加害者として話を聞きに来たんだろ。そうじゃなけりゃ日和に会いに来るわけがない!」
「だとしたら悲惨よねー、ついに退学とか?」
「高校中退とか、笑えるわ」
未来の居なくなった教室はしばらくはその話題でざわざわとしていたのであった。
「君、いつもこんな所で食べてるの?」
「まあ、最近は」
教室から出た未来と
屋上は解放されて無いので入る事はできず、生徒が来る事はない。窓も無いので微妙に蒸し暑く、それだけで人気のない場所だというのがわかる。
「まあいいわ。お昼食べましょう」
「あ、はい」
未来と欅神楽はならんで階段に座った。
「だけど、学校だとこの前の人物には見えないわね」
「は、ははははは……」
欅神楽は未来が暴漢から助けた(と未来は思っている)少女である。
未来はあの時、ダンジョン後でハイになっていた為にヒーローのような行動をとった。
この会いに来方はお礼ではなく何か勘繰られているのだろう。
そりゃそうだ。女の子をお姫様抱っこで屋根の上を移動する人間を不思議に思わない方がおかしい。
「大丈夫よ。根掘り葉掘り聞かないから。ただ、私が君と仲良くしたいと思っただけ。あ、私の名前は欅神楽
「日和未来です」
「硬いなー。ま、仲良くしてよね」
「……はい」
自己紹介を終えて、未来と妃子の少し気まずいお昼休みが始まったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます