第33話 ナタリアは反抗する
「なんのおと?」
ナタリアは大きな地響きが起きた事にも気づかず熟睡し、何やら陶器の割れる音で目が覚めた。
ベッドから降りようと思った所、割れた花瓶が目に入る。
(どうしてわれてるの?)
その時、ナタリアは寝起きの脳を活性化させて推理を始めた。
目が覚めた時に枕に足をかけていた事や、寝る前は花瓶がサイドテーブルに乗っていた事。
そこから答えを一瞬で導いたのだ。
(わったっちゃった!どうしよう・・・)
周りに誰も居ない事を確認すると奇麗に二つに割れていた花瓶を手に取る。
そしておもむろに外に出ようとした。
その時点でナタリアはどうするべきか決断していた。
『うめちゃえばいいよね』
外に出ようとしたところ、室外から誰かの話声が聞こえ、咄嗟に隠れた。
(そとのこえは
会話を聞いていると、ヴィンセントは誰か知らない人と話している事がわかった。
「司祭はん、ホンマ、今の内に逃げんとヤバイから!
「異なことを言うのだな、私の防御障壁は冒険者如きに破られるはずもない」
ナタリアはその会話が理解できなかった。
だが、ヴィンセントに埋めるのに良い場所を聞くことにし、会話が終わるのを待つことにした。
「それにしても、なんでこんな村いるん?」
「お前如きが知る必要はない」
「そでっか、じゃあ声かけてこなきゃええのに」
「お前には羊がそこそこ村を荒らしたところで、私に助けを懇願する役目を与えてやる」
「せやから、あんな羊、師匠がどうにかしてしまうねんって」
「そんな馬鹿な・・・ぐあ!」
司祭はダメージを受けてその場に蹲る、その直後大きな地響きが起きた。
「ほら、羊やられてもうたやん、いったとおりやろぉ?ほら、はよ逃げえや」
そうしてヴィンセントが一人になったタイミングで話しかけた。
「ナタリア・・・もしかして見たん?」
「なにを?」
「まぁ、さっきの人の事やけど、黙っててくれへん?」
「いいよ?」
「よしよし、次なにかお菓子出たら俺の分やるわ」
「わーい!」
ヴィンセントに割れた花瓶の処分を託すと、ナタリアはライオネルを探し始める。
しばらくの間、キョロキョロしながら歩いていると、
「なんだこのガキ」
頭上から威圧的な発言をされたナタリアはたじろいでしまう。
「あ、あの、ご・・・」
「俺さ、お前くらいのガキが一番嫌いなんだよな、見てるだけで殺したくなる」
アルはナタリアの胸倉を掴むと軽々と持ち上げる。
ナタリアは抵抗しようとジタバタしている内に、アルは別の何かを見つけたようだった。
「あー、忙しくなりそうだから、今回は見逃してやる。二度と俺の前に現れるな」
そう言うとナタリアを壁に向かって投げつけ、そして激しくぶつかった。
ナタリアは衝突の痛みを我慢しながら、アルから逃げるように姿を隠した。
ナタリアにとって物理的な痛みを辛いとは感じず、大した問題ではなかった。
それ以上に辛い事を知っているからという子供らしからぬ感覚を持っていたからだ。
(あのひと、あくにん!)
ナタリアはアルを悪人だと認識し、行動を確認しようと隠れながら追跡を始めた。
アルは見つけた相手に声をかけると、首筋に一撃入れて速やかに意識を奪う。
「犯人がこんなところうろちょろしてたら困るんだよなぁ・・・」
アルは拘束した相手を自身が借りたばかりの家に連れて行き、縛り上げた上で部屋に転がした。
この村では家族向けに家ごと貸し出しているが、鍵はついていなかった。
同じ様に家を借りていたナタリアもその事は気づいており、アルがどこかに行った後、容易に捕まった人物の元に辿り着けた。
「おきて、おきて」
ナタリアは捕まった人物を揺すって起こそうとしたら、相手は徐々に意識を取り戻した。
「何が、何が起きた?う、うごけん!」
ナタリアはその声に聞き覚えがあった。
ヴィンセントが話していた相手だったのだ。
「まってて、ヴィよぶね」
そう言ってナタリアはヴィを呼びに走った。
しばらくしてナタリアはヴィンセントを連れて戻ってきた。
助け出された司祭は自らをキャメロンと名乗り、ナタリアを小さな勇者だと称し、深く感謝した。
「ナタリアというのですね、この御恩は忘れません、いつか必ず返す事を誓います」
そういってペンダントを手渡した。
「これがあれば何があっても教会で保護できますし、ミトリア教国に来れば厚遇されるでしょう」
「ナタリア、良かったやん、ええもん貰ったなぁ」
「うん!」
そうして、司祭は急ぎこの村を離れて行った。
ナタリアとヴィンセントは手を繋いでライオネルを探し始めた。
するとリタとユーニスを含めて三人で話している所を見つけた。
その時ユーニスが「お主ら、もしかして───」と言い出していたが、ナタリアはそれを遮るように声をかけた。
「パパ~」
元気に声にライオネルの表情が明るくなり、それと同時にユーニスが驚きの形相で凝視した。
「パパ・・・ですって?ライオネル様はご結婚なされていたのですか!?まさかこの女がお相手!?」
ユーニスはリタを指さすが、ライオネルはやんわりと否定した。
「いや、今はまだ結婚していないんだ。この子、ナタリアは俺の養女だよ」
「そうなのですね、少し安心しましたわ。ナタリアさん、私はユーニス、よろしくね」
ナタリアは小さく頷くと、同じ背丈くらいの女の子相手に安心したのか少し微笑んだ。そしてそれを見たライオネルは満足気にしていた。
だが、そのタイミングでアルが姿を現した。
「ユーニス様、犯人を見つけました。我々の借り家に拘束しております」
ナタリアはアルを睨んでいるが、アルはナタリアの事が居ないかのように無視した。
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ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
感想など反応あれば非常にうれしいです。
咳を鎮める薬が眠気を誘うらしく、酷く眠くて小説書くどころじゃなくなっちゃいました。やばいくらい一瞬で寝落ちするので当面不定期になってしまいます。
これからもよろしくお願いいたします。
魔王様だけがいない なのの @nanananonanono
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