ホルスタイン女子の宝箱 kac20243

愛田 猛

ホルスタイン女子高生の宝箱

ホルスタイン女子高生の宝箱




日差しがうららかな春の午後、魔法学園では魔法理論の授業が行われていた。

年老いたヤギの魔物の先生の授業は、ぼそぼそとしか聞こえず、生徒たちは退屈な時を過ごしていた。


ちなみに先生の種族はヤギではないのだが、皆ヤギ先生と呼んでいる。雷の魔法が得意らしいが、彼が魔法を使うところはクラスの誰も見たことがない。


もちろん、真面目に授業を聞いている、ミノタウロス女子のミノ子のような生徒ばかりではない。


その隣の席のホルスタイン女子高生のホル美は、よだれを垂らしながら机に横顔をつけ、夢の世界に入り込んでいる。


その時、突然教室の正面にある教卓の上がまばゆく光った。


皆が驚いていると、その光から、一つの箱が現れた。

木でできているようだが、何となく魔力が感じらっれる。周囲には不思議な文様が刻まれており、鈍く光っている。 おそらく魔法陣だろうが、いままでクラスの誰も見たことが無いような術式が書かれているようだっが。


ヤギ先生は、声をうわずらせながら叫んだ。

「こ、これは伝説の宝箱だ!」


ケンタウロス男子のケンタが尋ねる。

「先生、それって何ですか?」


ヤギ先生は興奮しながら答える。

「400年に一度、この学園に出現する謎zの宝箱だ。魔法がかかっていて、開けられるのは、箱が指名する相手だけだ。


そして、箱を開ける者は、欲しい物を望む。すると、それに見合ったものが箱に入ってっているんじゃ。


「どんなもんが貰えるんですかあ?」グレイウルフのグフが尋ねる。


先生は言う。

「前回は、なんでも切れる伝説の魔剣だったという。その前は、大きなダイヤモンドと沢山のエメラルドがちりばめられたブローチだった。その前は金貨1000枚だったとか。まあその部分はわしもよく知らんが。


魔剣とブローチは事実だ。時にブローチは、その後王家が買い取り、年に一度、儀式の時に王妃が付けることに案っている。」


クラスの連中は皆どよめいた。


自分ならどうしよう…力を求めるか、地位を求めるか、財産を求めるか。


良いものであれば、国に献上することによって、地位を得ることができるだろう。

また、財宝であれば、それだけで一生遊んで暮らせるかもしれない。


魔剣を得て強くなれば、外敵を討伐したり、領土の拡張もできるだろう。他国をj屈服させたら、その国の王位に就くことすらできるかもしれない。


「皆、願いを考えておくように。誰が選ばれるかわからないが。わしも含め、みんなにチャンスがあるだろう。」


ヤギ先生は言う。


「箱は、どうやって相手を選ぶんですか_」

ケンタが聞く。


「ランダムなのか、皆の思いの中から選ばれるのかなどわからない。そこまでの記録が残ってないんじゃ。いかんせん、最近でも400年前の出来事だからのお。」


皆、かたずを飲んで見守る。


その時、お調子者であるケンタウロスのケンタが、「俺、も~らいっ」と言って、その宝箱に突進していった。



だが、箱に手をあてる直前で、ケンタは弾き飛ばされ、教室の後ろの壁にめり込んだ。


どうやら箱には意思があり、自分で相手を選ぶようだ。


目をまわしたケンタを見て、ほかの誰も動かなくなった。

皆、ドキドキわくわくしながら、箱の動きを見つめている。



突然、箱から声がした。

正確に言うと、箱から出たであろう声が、皆の頭の中にひびきわたった、というほうが正しいだろう。


「そこの、白と黒の服をまとった少女よ。おぬしだ。前に来て、欲するものを考えながらこの箱を開けよ!」


箱が選んだのは、ホルスタイン女子高生のホル美だった。 


(なに、この箱。単なろ巨乳好き?)ミノ子は心の中で突っ込んだ。

ホルスタイン女子高生

であるホル美は、見事な胸をしている。


ちなみに、ミノ子は、筋肉でよく引き締まった体格で、その胸部はスポーツブラ一枚でピッタリしっかりと守られる程度のものである。


皆、ホル美の方を見た。

ところがホル美は動かない。


「何をしておる、娘よ、ここまで来て、箱を開けよ!」

箱がいらだって声を出す。


ホル美はまだ夢の中のようだ。こんな一世一代の大舞台のときに、何という度胸だろう。ついでに、何という胸だろう。


まあ、何も考えてないだけ、とも言えるのだが。



見かねたミノ子が、ホル美をつついた。


「なあに~」ホル美がミノ子をとろんとした目で見る。



「前へ出て、ほしいものを頭に願いながら箱を開けるのよ。

ああ、ちょっと待って。これで口元を拭いて。」



ミノ子が差し出した茶色いハンカチで、ホル美は口の周りのよだれを拭き取る。


そして、ホルスタイン柄のセーラー服に身を包んだホル美は、、ふらふらと歩き、にぶく光を放った木の箱の前に出ていった。ちなみに、ショートカットの髪には、しっかり寝ぐせのアホ毛が立っている。



「さあ。汝の望みをかなえて進ぜよう。」


言い方が尊大になった箱の声が、全員の頭の中に響き渡る。


「望みを頭の中に描きながら、箱を開けよ!」


ホル美は、まだとろんとした目をしながら、

「わかったあ~」と言い、無造作に宝箱に手を伸ばした。


皆、かたずを飲んで見守る。


ミノ子も、はらはらしながら見守る。

これは、ホル美の人生を大きく変えてしまうだろう。


(ホル美が尊大になったりしないように、私がしっかりと矯正してあげないと。)


そして箱の蓋が開き、教室全体に光が広がる。


宝箱から出てきたものは…


















小さな枕だった。


「あ~これで、ぐっすり~」

ホル美はそう言いながら枕をもって席に戻り、机に置いた枕に顔をつけて寝始めた。



「…」


皆、言いたいことが沢山あるが、何も言えずにに黙ってホル美を見守る。



@こ、これで今回は終わりじゃ。また四百年後にな~」



何だかちょっと不満がありそうな口調で言うと、宝箱はそのまま消えた。



ホル美は、枕によだれを垂らしながら熟睡していた。


今日も魔法学園は平和だ。



(完)



===

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特に短編の場合、大体が一期一会です。


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ホル美は、kac2024で生まれたキャラクターです。

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