マナー【守りたくなくなる】ポスター


多くの人が毎日利用する駅。


そこにはたくさんのポスターがある。

雑誌の広告、セールのお知らせ、イベントの案内。


駅が設置したポスターもある。

臨時運転のお知らせ、定期券購入の案内、マナーポスター。



私が毎日使う「東京メトロ」。

その構内にも「マナーポスター」がある。


「マナーポスター」とは、名前から想像できるように、乗客に対しマナー向上を呼び掛けるためのポスター。


曰く、「駆け込み乗車は危険ですのでおやめください」

曰く、「座席の独り占めはご遠慮ください」

曰く、「電車内での声の大きさにご配慮ください」


……等々、内容は至極ごもっとも。




だが。


私、このポスターが、とても嫌いなのである。


見かけるたびに、なんとなく不愉快な気持ちになる。

心の中で「うるせーよ」と毒づきたくなる。


内容が正しいことはわかっている。

守るべきことだともわかっている。


それなのに、何故。




その疑問が、今日解決した。

(なので、記念に日記にしたわけだ)



まず、今月のポスター。

簡単に説明すると、以下のような構成。


<イラスト欄>

・優先席に座っていちゃつくカップル

・そばに立つ足を骨折した男性とマスコットキャラ

・「なぜ気づいてくれないの? 必要な人がいるのに」


<欄外の一言(今月のマナー)>

「優先席は必要とされるお客様へお譲りください」



欄外に書かれているマナーの文言は、一般的な内容。

となると、いらっとする原因はイラスト欄。


もう一度、見返してみる。


・優先席に座っていちゃつくカップル

・そばに立つ足を骨折した男性とマスコットキャラ

・「なぜ気づいてくれないの? 必要な人がいるのに」 イラッ


読み返してみる。


・「なぜ気づいてくれないの? 必要な人がいるのに」 イラッ


これだ。

これが、気に食わない。


「なぜ気づいてくれないの?」




……なぜ気づいてあげなきゃいけないの?



ちょっとした言葉のニュアンスの違いかもしれないけれど、そこには大きな違いがある。


・気づいて「くれる」→相手が自分のことに気づくときに使う。

・気づいて「あげる」→自分が相手のことに気づくときに使う。



足を怪我して、立っているのがつらいのはもちろんわかる。

だけど、その状態で、それでも「電車に乗る」ということを選択したのはあなた。

本当に立っているのがつらいなら、タクシーでもなんでも使えばいい。


なのに、なぜ、気づくのが当たり前、みたいな言い方をするの?




「当たり前に気づいて、席を譲る」というのが理想なのはわかる。

私も席が必要な人がいればもちろん譲る。


だが、譲ってもらう側の人が「譲るのは当たり前」と考えているのであれば、それはちょっと違う。


なぜなら、私もその人も、同じだけの料金を支払い、同じサービスを受ける乗客という「対等な立場」なのだから。




多分、このポスターに書かれているセリフが

「なぜ気づいてあげないの? 必要な人がいるのに」 

であれば、今このポスターに感じているほどには不快な気持ちにならないだろう。


席を必要としている怪我人、気づかずいちゃつくカップル、それを見て注意を促すマスコットキャラ、という構図になるからだ。


今の絵は違う。


怪我人自らが「俺が大変なのになんで席を譲らないんだ」と言っているように聞こえる。

それは、とても傲慢で自分勝手な印象を受ける。



これは優先席の問題に限らない。

敢えて「強者」「弱者」という言い方をするが、


「強者が弱者を助けること」は「当然」だが、

「弱者が強者に助けられること」は「当然」ではない。


赤ちゃんを連れたママに対して「大変だろうな」と気を使うのは当たり前だが、

赤ちゃんを連れたママが「赤ちゃんがいるんだから周りは気を使って当然でしょ!」というのはおかしい。


お店が「お客様は神様です」という気持ちでお客様に接するのは当たり前だが、

客が「俺はお客様だから神様だ」とお店にエラそうにするのは論外だ。



マナーは、受ける側もマナーを守ってこそ、初めてマナーとして成立するのだと思う。


だから、このポスター、不愉快なんだ。

一方的な気がして。

受ける側のわがままに見えて。





マナーを守ってもらったら、気持ちいい。

だったら、「マナーを守ってくれてありがとう」という気持ちを忘れないでほしい。

マナーを守る人も、一緒にいい気持ちになれるように。


そうしたら、こんなポスターがなくても、もっとマナーを守る人は増えると思う。




投稿日時:2012年10月04日 00:32

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る