優しいウソ

mixiニュースを見ていたら、「あなたがついた優しいうそは?」というコラムがあった。

その中に、「子供にサンタは信じていたら必ず来るよと言う」という意見と、

それに対して「サンタクロースがいるっていうのも、ある意味子どもの夢を壊さないために必要なうそですよね」というコメントが載っていた。




ても。

なんだかきれいな話みたいに書いているけど、よくよく考えたらこれって大人のエゴすごいよね。




クリスマス。

普通に親からプレゼントを渡せばいいだけなのに、


何も知らない子供に「サンタクロース」なるハゲの白ひげ親父、しかも全身赤い服という奇抜なセンスの持ち主の実在を無理やり信じ込ませ、


縁もゆかりもないその親父から会ったこともない子供へのプレゼントが届くという本来ありえない現象に対して「プレゼント届くかな~?」と「あるわけないだろ」というシチュエーションに対して期待を持たせ、


常識的に考えたら来るはずもないプレゼントをダシに「いい子にしていないとサンタさん来なくなっちゃうよ」などと脅し、


そんなウソを子供に信じ込ませた挙句、その眠っている枕元に不審な気配をばらまきつつ侵入して成長期の睡眠という大切な時間にその安眠を妨害し、


朝起きたら不自然にも届いていたプレゼントに対し、「サンタさんありがとう」というお礼とともに「これからもいい子にするので来年も来てください」という謎の約束を強制させられ、


そんなこんなで子供が成長し、


それが親からの、手の込んだ嘘であることが発覚し、


「いやぁぁぁぁ! 大人は汚い! もう何も信じられない!!!」と、信じていた両親に裏切られ人間不信に陥る可哀そうな子や、


「でもサンタを信じているふりをしたら、親からのクリスマスプレゼントとサンタからのプレゼントでほしいもの2つ貰えるな」というような打算的な子や、


「両親はまだ僕がサンタを信じる子供だと思っているから、信じているふりして喜ばせてあげなきゃ」と、親孝行と思っていらぬ気苦労を背負い込む子……


あるいは純粋さゆえにいつまでもサンタを信じていて周りの子に馬鹿にされてからかわれたり仲間外れにされたりする子、または「サンタはいる!」と言い張って喧嘩になったり嘘つき呼ばわりされたりする子……


など、さまざまな不幸な子供を生み出している。



それなのに、大人は子供が生まれると、その子にサンタを信じ込ませる。


「子供の喜ぶ顔が見たいから」

「家族の思い出を作るため」


親のエゴを、クリスマスという行事を免罪符に押し付ける。


そして、


「いやー子供が起きそうになって慌てちゃったよ」と自分で作りこんだシチュエーションを信じ込ませるためにいらぬ緊張をし、


「サンタさんに『うちはびんぼうでげーむがかえないのでください』なんて書いていやがる……痛い出費だ」と結局高額な出費をする羽目になり、


「いつまでも子供だと思っていたけどもう小学生か……うちの子がサンタを信じてくれるのはいつまでかなぁ……」と勝手にさみしがる。


もはや「子供のため」という大義名分をかざした、親のためのイベントだ。

なんと罪深いことだろう。


「嘘はいけない」と子供を教育しながら、つく大人の嘘。


やがて、子供が大人になったとき、自立して親元を離れたとき、自分の子供を抱いたとき、このひどい嘘は、「いい話」「暖かい家族の思い出」として子供の記憶からよみがえってくる。


そしてその元子供は、自分の子供に対し同じエゴを押し付ける。

こうして嘘の連鎖が出来上がる。

まさに負のスパイラル、断ち切ることは至難の業だ。





さて、そろそろ今年も嘘つきになる時期かな。





投稿日時:2012年11月11日 18:03

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