ニート→ニーター→ニーテスト
ニート。
社会問題として言われてもうずいぶんになるね。
3年前に買った携帯で「にー」って打ったら、予測変換に「ニート」って出てきたよ。
その前の携帯には入っていなかったんだ。
それを考えると随分浸透したね。
ニート。
「Not in Education, Employment or Training」の頭文字をとってNEET。
Education(教育)、Employment(雇用)、Training(職業訓練)のいずれの状態でもないものを表すらしい。
発祥はイギリス。
本場イギリスでは、16~18歳という狭い範囲の人を指す。
15歳で義務教育が終わった後、上の学校にも進まず就職もしないでぷらぷらしている層だ。
ニート。
日本では以下のように定められている。
「15~34歳の年齢層の非労働力人口から学生と専業主婦を除き、求職活動に至っていないもの」(厚生労働省)
ちなみに「家事手伝い」はニートに含まれません。
これは女尊男卑だと思います。
ニート。
本来なら労働をして税金を納める立場の年齢層。
それが働かないことで税収が減る、国が傾く、大問題だ。
だから、国はマスコミを使ってニートを非難する。
ニートの中には、もちろん「なりたくてなったわけじゃないニート」もいる。
働きたいけど運悪く仕事がなかった人、リストラにあって再就職先が見つからない人、身体を壊して働けなくなってしまった人、などなど。
世間体、社会の目、もニートには冷たい。
だから、実際のところ、ニートで居続けたいニートって、それほどいない。
皆必死に仕事を探し、日雇い、バイトでもいいから、となんとかしてニートをやめていく。
ニーター。
ニートの比較級。
後ろに「-er」をつけて比較級。中学で習ったアレ。
……名詞は比較級にならない、とかヤボなこと言わないで。
仕事を探しても見つけられなかったニート。
早ければ数カ月、遅くても1年くらいすればニートはニーターに進化する。
ニートよりニート、より深刻な状態。
一生懸命職を探したのに。
「学歴が」「職歴が」「資格が」「年齢が」
今更どうしようもない理由で仕事が見つからない。
「この空白の2年間は何をされていたのですか(笑)」
「コンビニのアルバイトは職歴とは言わないんですよ(笑)」
そうして言われる「残念ですが」。
家族の言葉も胸に刺さる。
「どうして仕事が見つからないの」ほっといてくれ、俺がききたいよ。
「がんばってるね、きっといい仕事が見つかるから」気休めはやめてくれ、現に見つかってないんだ。
「ごはん……ここ置いておくからね」俺の機嫌を伺うなよ!
どんな言葉をもらっても、全てが突き刺さってくる。
精神を病んで鬱の診断と薬をもらい、ゲームや何かで時間をつぶす。
ニーテスト。
ニートの最上級。
後ろに「-est」をつけて最上級。
ニーターを5年、10年と続けていけば、いずれ到達する究極のニート。
ズタボロにされたニーターは、生物の本能として自己防衛を働かせる。
学歴がないのは、育て損なった両親が悪い。
職歴がないのは、見る目のない会社が悪い。
資格がないのは、取れと言わなかった教師が悪い。
年齢が高いのは、新卒至上主義の社会が悪い。
俺は悪くない。俺は頑張った。でもダメだった。もう無理だ。
俺はこの程度の人間だ。だから、もうどうでもいい。
そして全ての希望を放棄し、無気力になる。
食事は親が持ってくる。もしくはカップめん。
時間だけは無限にあるから、ゲームとかいくらでも出来る。
でも面白くないから、少しやって投げだす。
敷きっぱなしの蒲団の上に転がっているのもおっくうだ。
だが外に出る気力もない。引きこもりを併発する。
収入源は親からのお小遣いとヤフオク。
とりあえず親が死ぬまでのあと30年くらいはこのままの生活で問題ない。
親が死んだら? ……ハハッ、樹海にでも行きますか。
「じゃあ、ニートを20年つづけたらどうなるの?」
それはニートではありません。
15歳でニートになって、20年つづけたら35歳。
ニートの枠組みに入れてもらえるのは34歳まで。
政府の「ニート対策の就業支援」などの対象になるのは34歳まで。
ニートはニーターになって精神を病み、ニーテストになって希望を失う。
そして最後には「ニート」というレッテルさえ失って……残るのは人の形をした抜け殻ばかり。
「ニートって、怖いんだね」
……何を他人事のように言っているの?
君も、明日からでもニートの仲間入りをするかもしれないのに。
日本は昔から、ドロップアウトを許さない社会です。
しかし、かつてのように「レールに乗りさえすれば安泰」というわけでもなくなりました。
「成果主義」「グローバル化」「キャリアアップ」などの聞こえのいい言葉で民衆を扇動し「給料据え置き」「リストラ」などを許すようになり、「終身雇用」という日本社会のメリットを失いました。
今となっては、学生時代には勉学に勤しみ、新卒時には真面目に就職活動を行い、社会に出てからは安月給で会社に勤め……そのように努力してきた普通の人でも、ある日突然職を失う可能性を否定できません。
そして、次の仕事が見つからないあなたは、いつの間にかニートと呼ばれる立場に変わっているのです。
マスコミは、ニートの報道をするときに、引きこもりやオタクのイメージを重ねてきます。
普通の人はニートに眉を顰め、嘲笑します。
でも、それは単なる印象操作。
誰でもニートになる可能性があります。
そして、ニーター、ニーテスト、と順調に進化し、35歳になって、最終的にニートですらいられなくなってしまう可能性があります。
……もしニートになってしまったら。
……その時あなたはどんな未来を描けますか?
投稿日時: 2013年03月05日15:57
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