鼻血で死ぬ  ※ノンフィクション系

以前ギャグの作品として、「鼻づまりで死ぬ」(作品名:come to a close)を公開した。

口呼吸が出来ない状態で、鼻が詰まってしまって窒息死するというくだらない内容だ。

もちろん完全創作だし、単なるギャグとして書いた以上の何でもなかったのだが……



まさか自分自身が、それにほど近い体験をする羽目になるとは思ってもみなかった。



寝ようとして横になっていた。

幸い身体には適度な疲労感があり、風邪薬の副作用もあってちょうどよい眠気に覆われていた。

部屋は温度も湿度も申し分なく、蒲団の手触りも心地よい。

ほどなく眠りに落ちようとしていた。


が、途中、妙な息苦しさに目が覚めた。

脳の普段使わないところが覚醒している。


この感覚、知っている。

水だ。

プールで鼻から大量の水を吸い込んだ時、あの時の喉の詰まりにとてもよく似ている。


溺れる……!


水面に出ようと必死に宙をかく。

だが手には何も触れず、息苦しさも解消される気配がない。


そこで気付く、ここはプールじゃないと。


目をあける。

外の明かりが差し込んで、勝手知ったる部屋が浮かび上がる。

ここは部屋だ。


ではこの息苦しさは何だ!?


鼻には水が詰まっている。

空気を吸うには口しかない!


喉を無理やり開く。

鼻にとどまっていた液体が喉へ落ちてくる。


「グェホッ!! ゴハッ!!!」


派手に咽る。


さらに咳の反動で、一度出した液体が喉の奥に吸い込まれる。

痛い、苦しい。


ま、まさかここで死ぬのか……


朦朧とした頭で考える私の口に、苦い鉄の味が広がる。

……あぁ、血だ。


動物としての本能が、それを吐き出そうと再び咳を誘発する。

鼻が詰まっているため、空気は耳の方へ抜けようとする。

キーンとして痛い。


鼻うがいの器具を使えば、鼻が通るのではないか。

ミネラルウォーターを飲めば、喉が通るのではないか。


手元にあるもの手当たり次第に試しながら、咳きこみと吸い込みを繰り返す。

こうして、5分ほど激しくむせながら鼻と口から赤いものをまきちらし、なんとか気管を確保することに成功し、私は一命を取り留めた。




風邪か、はたまた花粉症か。

どうやら寝ている間に鼻血が出てしまい、それが鼻に詰まってしまったようだ。

仰向けで眠っている間に、多少粘着力のある鼻血は片方の鼻の穴を塞ぎ、鼻腔を通じてもう片方の穴も塞ぎ、さらに重力に従い気管にまで進出していたのである。


普通なら、そうなる前に寝返りで体の向きを変えたり、無意識下で咳払いをして通りを良くしようとしたりするものなのだが、体調が悪く、疲れてもいたことが災いした。

私のものぐさな身体は、ちょっとの息苦しさに耐えることとちょっとの寝返りを打つことを秤にかけた結果、動かず息苦しさに耐える方を選んだのだ。





後に残ったのは、咳きこみにより部屋中に飛び散った血痕。


真夜中、一人むなしくカーペットにしみ込んだ血痕のシミ抜きをしながら、鼻づまりの恐ろしさについてぼんやり思いをはせるのであった……。





投稿日時:2013年03月28日20:51

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