とある宗教の晩餐会における教祖の説教及び食前の祈り

あの日のことは今でも鮮明に覚えています。

20XX年1月22日。ちょうど日が変わったころです。

当時会社勤めをしていた私は、帰宅すると軽くシャワーを浴び、そのまま寝室へ直行し、翌日のために泥のように眠るという毎日でした。

しかしその日、いつものように夜遅く帰った私は、不意に思いついたあることをしないことにはどうにも気持ちが落ち着きませんでした。

翌日のことがありますから、一度はベッドにもぐりこんだものの、どうしてもそのあることが気になって寝付くことが出来ませんでした。体はいつも以上に疲れているというのに、不思議と目がさえてしまうのです。

そうなると、どうせ眠れないのならばという思いが頭をもたげてきます。結局私はそのあと起き上がり、その思い付きを達成し、満ち足りた心で眠りにつきました。


今ならばわかります。

普段やらない様な事をふと、しかし強烈にしたくなったとき、そこには人知を超えた方の大いなる意志が働いているのだと。


その日を境に、私はそれの虜になりました。

日本国内で入手することのできるありとあらゆる素材を、これまた入手可能なありとあらゆる方法で作り上げては比較し、さらなる高みを目指しました。

我々日本人に合うようにと改良されたものだけではなく、国内で展開する諸外国のそれもまた試して、和洋折衷のアウフヘーベンを求めました。

そしてとうとう国内で入手できるものでは飽き足らなくなったころ、インド支店への異動が決まりました。

それが20XY年6月2日のことです。

そこで出会ったそれらは、諸外国のものは一通り知り尽くしたはずの私にさらなる衝撃を与え、人間の知りうることの小ささ、そして天にまします方の偉大さを改めて知ることとなりました。

あの時は国内のものを知り尽くしたことで、知らぬ間に私自身が聖なるお方に比類しうる存在だと思いあがっていたのでしょう。

増長した私に罰を与えるのではなく、自己を省みて更なる真実を追求することが出来るようお導きを与えてくださった神の慈悲深さとは、いったいなんということでしょうか。


その後日本に帰国してから私が行ったことは皆さんには周知のことですから割愛させていただきます。


今日ここにお集まりいただいた皆さんの上には、既に神の祝福があります。この場にいるということこそが運命、神のお導きなのです。

この奇跡のような集まりを偶然と片付けず、あなたの求めてやまないもの、あなたの心に訴えかけてくるものを見つめなおしてください。

幼いころからあなたと共にあり、嬉しいときも悲しいときもあなたを支え、そしてあなたの血となり肉となったそれを、愛と言わずになんといいましょう。


今皆さんの目の前にあるものは、あの日私がどうしても作らずにはいられなかったあの時のものと寸分違いはありません。

全てはこの世の始まりから、我らの神によって定められていることなのです。

どうぞ思いのままに口にしてください。そして、口の中に広がる甘みと辛みに、確かな神の愛を感じてください。


祈ります。


天にまします我らの父よ、御名を賛美いたします。

今日ここに一同が集うことが出来た喜びを感謝いたします。

また我らの前に、御心にかなうものが等しく与えられ、その喜びをかみしめることが出来る幸せを感謝いたします。

人の世ではつらい出来事や悲しい出来事が未だ多くあります。

災害により愛する家族や住む家を奪われたもの、紛争によりその尊き命さえ脅かされているもの。

どうかこの素晴らしいものが、今以上に世界に受け入れられ、苦しみの中にあるすべての人々の慰めとなりますように。


偉大なるターメリック神の名において。


「「「「「カレーよ、永遠なれ!」」」」」




※1/22及び6/2は、カレーの日です。



2014年01月22日 19:47

2014年1月お題「神様」

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