サボテン
今までに二回サボテンを育ててきた。
正確に言えば、ダメにしてきた。
最初のサボテンのとき。
植物なんて育てたことのない私はグリーンハンドを持つという友達にサボテンの育て方を聞いた。
「私にも育てられる?」
友達は笑って言った。
「サボテンなんてほっといても勝手に育つよ」
何もしなくてもいいのか。私はその言葉を真に受けた。
結果サボテンは、数か月ですっかり枯れてしまった。
茶色くしなびたサボテンを前に私は後悔して泣いた。
二度目のサボテンのとき。
最初のサボテンを枯らしてしまった私は、すっかり緑に興味を失っていた。
見るだけでいいや、と思っていた私に
「部屋にグリーンがあるだけで生活がガラッと変わって幸せになるよ」
と友達が小さなサボテンをくれた。
最初は有難迷惑だと思っていた私も、徐々にサボテンが愛おしくなって、毎日世話をした。
霧吹きで水をかけ、鉢に栄養剤を挿した。
しばらくして葉肉がぶよぶよしてきた。
焦った私は、より栄養価の高い栄養剤に取り替えた。
結果サボテンは、数か月で完全に腐ってしまった。
サボテンをダメにしてしまったことを謝ると、話を聞いた友達は
「ちょっとやり過ぎちゃったね」
と苦笑した。
放置してもダメ、構いすぎてもダメ。
でも、どのくらいのお世話がちょうどいいのかわからない。
誰にでも簡単に育てられるはずのサボテンが、私には育てられない。
皆ができることが出来ない。
サボテンは、私には向かないんだ。
私は、グリーンなしの生活をするしかないんだ。
それならそれで仕方ない。
サボテンだって、ダメにしてしまう人よりは、大切にしてくれる人の所に行ったところがいい。
そう思っていたのに。
今、私の手元には、新しいサボテンがある。
すごく綺麗で可愛くて愛おしい。
絶対にダメにしたくない、そう思って改めてサボテンの育て方を調べた。
サボテンが実は水を好むこと。
日光を当てて上げることが何よりも重要であること。
一番大事なことは、サボテンとしっかり向き合うこと。
上手に育てることが出来れば、必ず、美しい花をつけること。
決めた。
自分勝手なほったらかしも、独りよがりの過剰なお世話もしない。
ちゃんとサボテンと向き合って、サボテンが求めていること、サボテンが喜ぶことをしてあげよう。
私を癒してくれるサボテンにちゃんとお礼を言って、あなたがいてくれて幸せだって伝えよう。
そうすれば、きっと今度こそ、上手に育てることが出来るはずだ。
そして、いつか。
「どうしたの?」
「なんかね、幸せだなって」
「うん、わかる。俺も幸せ」
この思いが、美しい花をつけますように。
(2013年09月04日 16:16)
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