すきま

「わー、すごい、ここ良い!」

「おいおい落ち着けよ、子供じゃないんだから」

「だって、こんなに広いし綺麗だし」

「さすが新築は違うよな」

「あっちの部屋も見てくるね!」


「ちょっと予算オーバーだったけど、ここに決めてよかったね」

「そうだね」

「ねぇ」

「なに」

「ふつつかものですが末永くよろしくお願いします」

「な、なんだよ急に改まって」

「へへ」

「それに『ふつつかもの』って嫁入りのときの挨拶だろ」

「ダメ?」

「まだ早いだろ」

「私は今すぐでもいいけどなあ」


「ただいまー……おっ、特番やってるじゃん」

「ちょっと、ドアはちゃんと閉めてよー」

「ゴメンゴメン」

「もう、寒いじゃない」

「俺であったまる?」

「バカ」


「ごはん出来たよー」

「待ってました!」

「あっ、また! ドアちゃんとしまってないよ」

「いいじゃん数センチもないし」

「そういう問題じゃないでしょ! 閉めてきたらごはんあげる」

「ちぇっ……めんどくせえな」


「早く早く! あのCMやってる!」

「どれどれ!? ああ、終わっちゃってるじゃん」

「録画しておけばよかったね」

「俺部屋に戻るわ」

「あ、ドア」

「わかってるよ、『ちゃんと閉めて』だろ」


「また開けっ放し」


「もう……なんでドアくらいちゃんと閉められないのかな」


「…………」


「ごはん出来たよー」

「持ってきて」

「こっちこないの」

「……」

「だらしないよ」

「……お前ドアドアうるさいから」

「なにそれ」

「数センチの隙間がそんなに気になるのかよ? だらしないくせにどうでもいいところばかり神経質だよな!」

「あなただって細かいことまでうるさいくせに、ドアの一つも満足に閉められないなんておかしいんじゃないの!」

「おかしいってなんだよ!」

「そっちこそ!」


「結局持たなかったな、一年」

「うん」

「仕方ないか」

「結婚とかの前にわかって良かったんだよ、きっと」

「そうだな」

「そうだよ」

「今度はどんな所に住むんだ?」

「まだ決めてない」

「そうか」

「あなたは?」

「俺は……適当な1R探すよ」

「そう」


「さよなら」

「さよなら」




2014年03月12日 22:17

条件:会話のみで進む話

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