箱・おぼろの龍 その3 完結

京極 道真  

第1話 帰る箱

箱から出た龍のヤマト。僕のカラダを箱がわりに使う。

1日だけの約束だ。

「ヤマト、空からの景色は感動した。そろそろ地上に降りないか?」

「そうだな。人間界の日常も見てみたい。リクしっかりつかまれ。」

急降下。俺様キャラの龍らしい降り方だ。

「気圧差で耳がいたい。スピードを落とせヤマト。」

「人間は相変わらず、弱っちーいな。」

たぶん今ヤマトは何か言ったが風の音で聞こえない。たぶん弱っちーいなっとか言ったんだろう。

僕らは地上に戻った。「リク、お前のカラダを箱代わりの使うぞ。」

「ドーン。」僕の真ん中にヤマトが入った。時々顔だけ出して僕に話かける。

「リク、こうしてみると人間も様変わりしたな。箱のような動く乗り物でかなりのスピードで移動しているぞ。」

「あれは、車。四角い箱だ。それにあっちは電車だ。四角い箱を連結させて大勢の人間を移動できる。」

「俺様がリクの前に話した人間は小次郎。奴の移動は同じ四角い箱だったが人間が前と後ろで担いで移動していたな。それもかなりゆっくりと。見ててあくびが、でたぞ。」

「ヤマト、どの時代と比べてるんだ。」

「どの時代と言われても、わかん。俺様にとってはわずかな時間だ。」

「聞いた僕が悪かった。」

甘い匂いがしてきた。「リク、匂うぞ。あの店だ。リク急げ。」

カラダが勝手に店に向かう。不自然な格好だ。仕方ない。

僕はクレープ屋の前に来た。「リク、食べたい。買ってくれ。」

「ヤマト、ほんとにお前はいやしい龍だ。」

「違うぞ。高貴な龍だ。クレープは見聞のために食べるんだ。人間の食べのもの勉強だ。」

「はい。どうぞ。」ヤマトはおいしそうに食べている。

「ヤマト、夕日だ。これからどうするんだ。約束の一日が終わるぞ。」

「弥生おぼろかすみ。境界線が閉じる前に俺様は元の箱に戻る。」

「その箱はどこだ?」

夕日の細長い赤が龍のヤマトを照らす。

「俺様はこの大地にいる。箱に戻る。またな。リク。」

「またな。ヤマト。」


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