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青峰佐句良と再会したあの日から、ユウカの部屋に呼ばれることはなくなった。

呼ばれなくなって数日経ったある日、ガラス窓を磨いている僕のところにユウカの世話係の一人がやってきて、ユウカは体調を崩しているから会えないとの説明を受けた。お見舞いをしたいと申し出たが、許可が下りなかった。

四季棟に入れなくなったことで、呼子に会える可能性はほとんどゼロになったから、その日のうちにバイトを辞めることにした。

こうして最後の夏は呆気なく終わってしまった。

再開した日常が、夢でも見ていたかのような日々を覆い隠す。

始業式では、青峰佐句良に続いて赤羽融香が呼子に選ばれたことが校長から伝えられた。他学年を中心にどよめきが沸き起こると、いつもなら教頭が一喝するところだが、今日に限っては自然に落ち着きを取り戻すまで見守っているようだった。

教室に戻ると、そこには抜歯した後の歯茎のような居心地の悪い欠如の感覚があった。ユウカが前に座っていないからやけに視界が開けているし、そうして開けた空間が僕に注がれる憐れみの視線をより強く感じさせた。

それでも日々は淡々と過ぎていく。

次第に残暑もなりを潜め、教室にはちらほらと赤本を解いているクラスメイトが現れ始めた。僕は特に受験勉強もせず、それまで通り授業を受けるだけだった。

こうして授業を受けている間にも、彼女は粛々と死の準備を整えている。彼女は死ぬために日々を生きているのだ。

僕は何のために日々を生きているのか。もしくは、何のために生きるべきなのか。

『人生の意味って何なんだろうね』

よく晴れた春の日に、青峰佐句良は同じ疑問を口にしていた。

彼女はその答えを見つけることができただろうか。

ユウカは。

僕は彼女たちの背中を周回遅れで追いかけている。その間にも呼子たちが次の季節を呼んでいたのに、だ。僕は彼女たちが生み出した時間を無為に過ごしてきた。

僕とユウカに残された時間はそう多くない。

夏に見たユウカは、全てを受け入れたようだったけれど、それは意思のない落ち葉が川の流れに流されるままになっているのと同じにも見えた。あの時、既に半分ユウカは死んでいたのかもしれない。

彼女が完全に死んでしまう前に、もう一度話をしたい。会ってもらえるかはわからないけれど、扉の前までは行くべきだ。

ユウカともう一度会わなければいけない。

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