第11話 時計

 昔から、いかにも精密機械という感じのアナログ時計が好きだった。


 昔は機械式の時計ばかりだったが、今はクオーツやソーラー、しかも電波時計と時刻を合わせる必要もなく、規則正しく時を刻む。


 楽しい時間はあっという間に過ぎ、嫌な時間は遅々として進まない。時間は常に正確に刻まれていくが、現実に流れていく時間は、なぜか不確かなもののようだ。


 つい先日、初めて出かけた街を歩いていた。見たことがある景色ばかりが続く。駅に着いたのが13時13分、15分ほど歩いて何気なく時計を見たら、13時09分。


 『あれっ。時計壊れちゃったかな、駅に着いたのが13分だったはずなのに·······』


 時計はデジタルソーラーの電波時計、狂うはずなどない。どこかで空間が交差し、全く同じで全く異なる別次元に紛れ込んでしまったのかもしれない。


 だから初めてなのに、見たことがある景色ばかり。その日以来、日々の生活でも違和感はいつも感じているが、この世界で生きている·······

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