第7話 あいつ

 小さな頃から結構ヤンチャな暴れん坊だった。


 しかし今は揉め事があっても、まずは自分から謝る、そんな真面目人間に変身している。


 そんな俺でも我慢の限界にきていた。電車の中やファミレスなど、気がつくと見かける。

 

 目線を合わせたことはないが、でも見られている、間違いなく。


 気がついて2か月ほどかな、理由も解らず尾行されるようでイヤだった。今日はハッキリさせるつもりだった。


 退社後に寄るデパートの地下、辺りを見回すとかなり離れた場所に、やはりあいつはいた。


 トイレに入り追ってくるのを、個室で耳を澄ませて待つ。足音、たぶんあいつだ。思い切り個室のドアを開いた。


 目の前に立つ、トイレの照明に照らされたあいつ·······


 俺にそっくりなあいつ、

 いや俺そのもの、俺自身だった。


 いつも回りを彷徨く男、消えたトイレに向かう。今日こそハッキリさせてやる。


 誰もいないトイレ、突然バタンと個室のドアが開く。居たあの男·······


 私にそっくりな男、

 いや私そのもの、私自身だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る