第6話 穴

 小学生の頃、家の近くに友達とよく遊びに来る、小さな川の土手に洞穴があった。


 「何かの動物の巣かな?」

 「何か宝物が隠されてるかも」


 直径50cmほどの穴を覗き込んだ。


 「入ってみようぜ」

 「オレはイヤだよ。お前が入れよ」


 言い出した手前、狭い穴に頭から這うように入っていく。暗闇の中、肘で少しずつほふく前進する。


 暗闇に白いもの、髪の長い女の人の顔が見えた。体は顔の後ろに隠れて見えない。


 怖くはなかった。顔の前の手が伸びて、ボクの顔を冷たい両手が包む。


 『おいで』 


 風の音のような声が響く。ヤバい気がした。顔を振って手を振り払い、肘で後ろに下がる。


 突然、穴の上の土がどっと崩れた。頭を体を重い土が包む·······


 「おい、大丈夫?」


 心配そうに覗き込む友達の顔。突然穴が崩れだしたので、慌てて足を掴み、穴から引っ張り出したんだって。


 体中土まみれ、一瞬気を失っていたみたい。友達にも話していないけど、穴の中の女の人、何だったんだろう?


 今でも穴やトンネルは苦手なんだ

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