最強メンタル
「え…ごめん、そうだよね、早く帰りたいよね。」
「違う!そうじゃなくて…。なんでもないから大丈夫!」
どうなってんだ?なんかメンタルがおかしい。優しい陰キャなのか、それとも鬼メンタルなのかなんなのかまったくわからん!
「それでね…えーっと。」
「おい!」
「え?えっ?どう、したの?」
僕はまた無意識のうちに大声を出してしまった。
もうダメだ!
「ごめんっ、今日はちょっと…」
「あ、うん!わかった。またね!」
「うん、ごめん。」
「ああ、僕が望んだのはこんなんじゃないのにぃ!ていうかメンタルバグりすぎだろ!どうなってんだ?どっちなんだよ!」
あんなに怒鳴ったのに手振ってくれてる…優しすぎるって!
「さっさと帰れー」
は!?いや、何を言ってんの!?
待て待てもう家入ろう!!
ドン
「はあ…どうなってんだ。」
ドキドキする。これは恋愛的ドキドキじゃなくて恐怖のドキドキだ。怖すぎる、自分が怖い。何言うかわかんない自分が…
とにかくどうにかしないと。
「仁、ご飯だよ。」
僕が部屋でゲームをしていた時、お母さんが部屋に入っていつものセリフを言った。
「ほら、来て。」
「あのさあ、なんでノックとかしないわけ?こっちゲーム集中してたんだけど。なんでわかんねえんだよクソババア!」
「いきなり何言ってんの。来なくていいよもう。」
「…!?違うの、言い間違い!」
「言い間違いとか…。長すぎ」
ドンッ
「これはマジでやばいぞ。やっぱりあの店行かないと。元のメンタルを返してもらおう…」
◆
クッソ…結局今日の朝もあの店の人に会えなかったし。どうしたらいいんだよ!
「そこの学生さん!」
「あ!きた!」
「新しく塾ができました!是非入ってみませんか?」
「いやあの…」
「うっせえええんだよ!ばああああか!」
おい、バカ!
「すいません!」
「はぁ??」
マジでどうすんだよ、早く会わねえと!
「学生さん!」
「あ、」
「あ!あなた、この前レンタルしてくれた学生さんじゃないですか!どうですか?効果は?人生変わりました?」
「ふざけんなあああああああああああ!」
「なるほど…それは大変でしたね。」
「ほんど酷い目に遭いましたよ!」
「それでどうします?またメンタルレンタルしますか?」
「今のメンタルを今すぐ返却します!」
「わかりました。」
店員が俺の頭に手を当てると頭から白い光が出てきて、それが心臓の模型に吸収されていった。
「終わりましたよ」
「は、はひ。」
いや…メンタルよっわ!!!ゴミか!?でもなんかスッキリした。
「それじゃあレンタルしていきますか?」
「もう懲り懲りですよ…」
最初は最強だと思ってた鬼メンタルは今の僕からすれば最悪のハズレカードだ。
「いいんですね?そのメンタルで」
「はひ!」
ブンッ
僕は気付くと次の朝へと飛んでいた。しかもそこはいつもの寝室ではなく学校の教室のドアの前であった。もうすでにいつものやつらのうるさい声が聞こえてくる。
ガラガラ
「うわ、羽田来たよ…最悪。臭、」
僕は最弱のメンタルだ。人生を変えるために、僕は欲した、鬼メンタルという最強のメンタルを。
だが、鬼メンタルを借りても結局誰にも好かれたりなんかしなかったし、注目を浴びれてもその視線は全て冷たかった。
僕は自分を最悪、最低な人生オワコンのメンタルだと思ってた。でも僕のメンタルは…
いや、その性格は真に自分を表現してた。
自分のいいところは全てそこに詰まってたんだと思う。
お母さんのことをババアなんて言わないし、「早くしろ」とか、「黙れ」なんて言わない。クラスの性格の悪い奴は面白いからって好かれてるけど、そう言うことを平気で誰にでも言うんだ。
ダメじゃない。ダメじゃないんだ。メンタルなんて変えない、そんなとこに頼らない。僕は僕で生きていこう…
今日も僕はクラスの端っこで本を読み、陽キャにその本をとられては小さく
「やめて」
という。陽キャはそんな僕を見て笑うけれど、そんなお前たちを目指そうとしてたのだと考えると恐ろしい。
お前たちみたいになりたいとか、馬鹿馬鹿しい。むしろ、俺はお前たちになれなくて良かった。
あぁ、俺って最高。
「羽田w今日もぼっちかよ、人生終わってんなクズ野郎がよ。」
レンタル、おにめんたる! 学生作家志望 @kokoa555
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