学園入学試験①
蒼華によると魔術学園は現実世界(非魔術世界)と異なったもう一つの世界“魔術世界”に存在するらしい。
魔術界には魔力に満ちている。
また現実世界ほど土地開発が進んでおらず森林だったり自然の割合が圧倒的に高い。
その為、独自の生態系が築かれており現実世界には居ない様な生き物がいる。
そんな魔術界へ行くのは実に簡単で、魔力を知覚できる者が“行きたい”と念じながら路地を抜けると行ける。
ここでいう路地というのは特に大した意味を持たず、何かと何かの間を通り抜けるという行為にこそ意味があるのだと。
車の場合は路地が1番界渡りしやすいから路地を利用した訳だ。
路地を抜けるとそこは海だった。
川端康成もびっくりする変貌具合だ。
先程までは人が行き交う都心にいたのに路地一つ抜けただけで海についてしまったのだから。
前情報通りなら海の上にあるクソでかい城が魔術学園なのだろう。
見る限り魔術学園までは橋があるし、このまま車で行けそうなのだが、問題は魔術学園と思しき城が5つあるという点だ。
5つある城を結ぶ橋。
上から見たら橋が星の形を描いている事だろう。
と、そんな事はどうでもよくて試験会場が何処なのか探さなければならない。
「蒼華。試験会場ってどの校舎か分かるか?」
「確か第一校舎って言われたな」
「第一、第一……」
あった。
事前に届けられた地図によるとここから橋を2度渡ったところにある校舎だ。
距離は20kmってところか。
「これ試験受けれるかなぁ」
蒼華が助手席で呑気に宣った。
「3秒ルールなんてのがあんだし、30分の遅刻なら許すってルールもあるだろう」
「受けさせてくれなくても、試験官ボコって学園長に直談判すればいいかぁ」
2人の社会不適合者を乗せた車は途轍もないスピードを出してミカリス校舎へと走り抜けていった。
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うぅぅ、試験が始まる……。
やばいやばい。このために5年も勉強してきたんだ。絶対に受かるはずだ。
ビビるな。ビビるな。
大丈夫。おかしなことでも起きない限り頭に入った知識がトぶなんて事はないはずだ。
僕は何度も自己暗示をかけて単語帳を開く。
実技の比重が重いこの学園に受かるためには最低でも実技5割取らなければいけない。
一流の魔術師でも6割取れるかどうかの試験を5割取らなければならないのだ。
もう実技は祈りを捧げて筆記で得点を取れる様に最後の足掻きをする。
『1445年3月21日。これより方舟魔術学園入学試験の入場を始めます。一列に並び、身分証の提示をお願いします』
当初の見込みより受験者が多く試験の開始時刻が遅れていた。
やっと入場が始まった様だ。
ん?
エンジン音がする。相当飛ばしてるな。
あれ?これ近付いてきてないか?
なんかこっち向かってきてきてる気が─────
ドォォォォォン‼︎‼︎
木で出来た門を突き破り黒い車が現れた。
立ち昇る砂煙の中、車から2人出てきた。
「おっ、間に合った風だな」
2人組の男女。
青髪の少女と少女より頭ひとつ大きい黒髪の少年。
正装で来る様に言われていたのに滅茶苦茶ラフな格好で来ている。
確かにお洒落だけれども試験にその服装で来るか?と聞きたくなる身なりだった。
「「あ」」
車で来た少年少女が同時に声を上げた。
それもそのはず、彼らの目の前には魔術警察。その幹部である
「よお!お前ら、今度はテロリストにでもなるのか?」
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