学園入学試験②
「な、なんだよ捕まえに来たのか?」
震える声で蒼華が言った。
その様子を見て円香はニヤニヤと笑いながら答えた。
「いいや今日別件だ。怖がらせて悪かったな。試験頑張れよ」
「こ、怖がってねえわい!」
ビクビクと震える蒼華の肩を叩き、円香は学園へと入っていってしまった。
すれ違い様、円香と目が合った気がしたが気のせいだろう。
「あの受験者の方ですよね?門の修理代は受験料に足しておきますね」
受付のお姉さんが仕事を増やすんじゃねえと言わんばかりに殺意を込めた目を向けてきたのは流石に気のせいではないだろう。
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『お付きの方は別室にてお待ちください』
俺はアナウンスを聞き従者用の部屋へと移った。
別れ際、親指を立てて会場へと行く蒼華の姿はターミネーターのラストを想起させて不安を煽られたがまあアイツの実力を考えれば心配する必要もないだろう。
しかし、こうして見ると魔術師の従者ってのは意外と多いのか比較的広いはずの部屋も人で溢れていた。
吹き抜けにオーシャンビューと開放的なおかげで暑苦しさというものはないが、これだけ魔術師が溢れていると魔力酔いしてくる。
多分、主人よりも従者達の方が実力が高いこともあり試験会場よりこっちの別室の方が平均値が高くなってるのだろう。
牽制しているのか魔力量を誇示し合っていて最悪だ。
魔術界の貴族達の手がこんな所まで伸びているとは流石に考えていなかった。
ふと横を見るとボブカットの女?男?が立っていた。
馬鹿なのか阿呆なのか、俺最強と書かれた長いマントを羽織り、右手に包帯を巻いている。
こっちを見てなんか言ってる。
あの風貌に言動、完全に厨二病だ。
(絶対に関わらないでおこう)
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ふむ、他の貴族の従者といっても大した強さじゃないみたいやな。
わてと同等レベルは数人しかおらん。
警戒し過ぎて損したわ。
ん?なんや?もう1人いたみたいや。
わての隣、海を見ながら黄昏てる
他の奴らみたく魔力を誇示してはないけど、濃密な魔力を身に纏っている。間違いなく実力者や。
しかしまあ、あんなにカッコつけて海を眺めちゃって、
「厨二病やな」
うわ、こっち見てきた!
ずっと見てくる!
目がイっちゃってる。厨二病やない!これは変態の目や!
完全にやばい奴やった!
(絶対に関わらないでおこう)
俺最強マントマンこと
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俺が蒼華と別れてから数分。
試験会場の方向から爆発音が響いた。
騒めき立つ貴族の従者連中を他所に俺は落ち着き払っていた。
確かに俺も最初は驚いたのだが爆発音のした会場を見て呆れてしまった。
「三流魔術師はお前だ!筋肉ゴリラ!」
聞き覚えのある声。
見覚えのある魔力と魔術式。
「はあ」
ため息が漏れた。
その原因は明白だ。
今もなお砂煙が舞い上がり、火花散る、あの爆発騒ぎの中心にいるのが蒼華だからである。
「今度は何してんだよアイツ」
響はバルコニーから飛び降り、蒼華の元へと向かっていった。
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