箱は届けられる。そしてまたその箱は…。

黒羽冥

第1話巡る巡る箱

俺の目の前に今とある箱が置かれている。

(こ……これは…………。)

そう…この箱は実は。

俺はどこにでもいるサラリーマン。

いつものように仕事に出かけ、そして、普通に仕事をこなし帰ってくる。

そんな誰でも体験する通常のありふれた日常を送っていた。

そんなある時。


時間は終電に間に合い電車を降りると午前十二時は過ぎていた。

俺は会社から帰ると、アパートの扉を開ける。

すると目の前にひらりと一枚の紙が足元に落ちていく。


「ん?なんだこれ?」


手に取り見てみるとそれは宅配便の不在票。


「俺何か頼んでいたっけかな?」


差出人を確認すると。

見慣れない会社からの俺への商品のようだ。

俺は間違いかなと思ってはみたが…。

その時…ピンポーンとチャイムが偶然鳴る。

こんな時間に…?


俺は、はぁーい!と声を上げるとお届け物です!と声が一枚ドアを隔て聞こえる。

多少、疑問にも感じたがその場の流れでドアを開けると、立っていたのはこの不在票を入れていった宅配業者のようだ。

俺はハンコを押すとその箱を受け取り。

そして現在に至っている。


うーん……しかし……これは何が入ってるのだろう。

俺は箱をじーっと眺める。

受け取ってからこうして一時間ほど眺めているのだ。

差出人は『DOLLboy《ドールボーイ》』という会社。

俺は買い物といっても滅多にネットでは買い物などしない派なのだ。

だからこうしていざ何かを受け取ると…箱を開けたくなる衝動に駆られてしまう。

世の中クーリングオフというのもあるし、いざとなったら送り返そう!

そう考えてしまっていた。

だが。

本当に開けていいのか!?

これをあけたら中から何かが飛び出してくるとか。

そんなホラー、そして厨二病的な発想をしてしまう。

人間とは!?

自分の理性が効かなくなるという話もどこかで聞いた事もある。

そう、やはり欲求には敵わない部分も大いにあると思う。

俺もそんな弱い心を持つ一人の人間なのである。

だが…心の奥底では開けちゃダメだ!開けたら負けだ!!

という心の声も聞こえてくる。

そう…天使の俺と悪魔の俺が葛藤しているのだ。


『ねぇ!開けたらダメだよ!もしかしたら人違いかも知れないしさ!』


そう天使の俺が言う。

すると、そこへ悪魔の俺もやってくる。


『いいじゃねぇかよ?間違ってても自分の名前が書かれてたのでって言えば!それにさっきも言ってただろ?クーリングオフってのもあるだろ?』


そう、こう争うまでもなくクーリングオフという言葉で悪魔が勝ってしまった。


「あ、開けて…見るか。」


俺は等々…箱へと手をかけてしまっていた。

まずは包装紙を綺麗に…と。

俺は包装紙を綺麗に剥がすとそれはダンポールの箱だった。

すると…。

ガサガサッと中から何かの動く音が聞こえる。

何だ!?何の音だ!?

俺の鼓動は早くなり箱に触れる手は汗ばんできていた。

すると箱に貼ってあったシールが目に入る。

何が書かれているのかを確認しようと覗き飲む。

すると…ダンポールの隙間から何かの視線を感じる。


う!!

これは何だ。


そう思ったが俺は気を取り直し印字を見る……。

そこに書かれていたのは。


『この箱の中にはとある、人形が入っています…開けようと考えてしまった方は……覚悟を持って開けてください…そして責任を。』

「うっ!!」


俺はその文字に思わず仰け反り尻もちをついてしまう。

すると。


カサカサ中で蠢く何かの音。

俺は腰を抜かし…動けなくなっていた。


『ハッハー…次は…お前のばん。』


バリバリと箱の内側からダンポールを引きちぎる音が聞こえる。

引きちぎられたダンポールは俺の部屋の床にパサッと落ちる。

すると。


中から小さい腕、そして、手が飛び出し…更にダンポールをひきちぎっていく。


「う……はぁぁぁーーーー!ーー!!?」


俺は声にならない声を上げる。

その瞬間。


突然…目の前が暗くなった。

気がつくと…俺は暗闇の中にいた。

温かいのではあるのだが。

この中は紙の匂い…ああそうだ。

ダンポールの匂いだ。

俺の身体はダンポールの中に入れる程の大きさにいつのまにか変えられたのか?


すると。


俺ごと箱を誰かが運んでいるようだ。

あ…なんだこれ。

俺……あ……そうか……。

俺の思考はある一点に気がつく。

あの人形……。

俺が今度は人形の中に意識が吸い込まれたのか。

今度は。

俺は……次の人の身体を……俺が…。



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箱は届けられる。そしてまたその箱は…。 黒羽冥 @kuroha-mei

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