18話 戦いの終わり
厄龍アラン視点
「ふっふっふ……やったぞ! ざまーみろロレッタ!!」
厄龍アランは勝利を確信すると邪悪な笑みを浮かべた。闇の炎は消える事なくメラメラと燃え盛る。後は民衆共を火炙りにしてやる。早速次の獲物のを探そうとすると……
「なんだ……? 眩しい!」
一筋の光が空に向かって伸びて行く。闇の炎は強い光に包まれて消滅する。よく見ると1人の女性が立っていた。
「ロレッタなのか?」
先ほどまでとは明らかに様子が違う……長い髪が金色に輝いて、火傷をした皮膚がきめ細かな白い肌に戻っている。そして瞳に不思議な幾何学模様が宿っていた。
「まだそんな力を残していたか! だがもう遅い! 燃え尽きろ‼︎」
アランは大きく口を開けると無数の黒炎を放った。王国に火の雨が降り注ぐ。逃げ道は何処にもない。これで終わりだ!
「さぁ、絶望しろ!」
高笑いをするアランとは対照的にロレッタは静かに空を見上げると、堂々と胸を張って宣言した。
「ロレッタの名において命じる。元第一王子のアラン、せめて最後は人としてこれまでの行いを悔い改めなさい!」
透き通った声が王国に響く。ロレッタは胸の前で手を組むと祈るように詠唱を唱えた。
「ホーリーレイン!」
鉛色の不気味な雲の隙間から光の雨が王国に降り注ぐ。光の雨は黒い炎を打ち消すと、アランにまとわりついた。さらに壊れた建物が元の美しい街並みに戻っていく。
「なんだこの雨は! クソ! 浄化されてく……‼︎」
アランは狂ったようにもがき苦しむと、小さな黒い粒子となってチリジリに消滅した。
* * *
ロレッタ視点
「あれ? 私は一体何を?」
スッーっと力が抜けていき、瞳に宿った不思議な幾何学模様が消えていく。辺りを見渡すといつもの美しい街並みが広がっていた。空も澄み渡りさっきまでの激しい戦いが嘘みたいに感じる。
「にゃ〜お」
キョトンっとしていると、シャーロットが私の元にすり寄って来て可愛らしく鳴いた。さらにクリフト様やバーバラも手を振りながら走って来た。
「ロレッタ、大丈夫なの?」
バーバラは私の無事を確認すると、ホッと息を吐いた。そして私とクリフト様に頭を下げた。
「クリフト様、そしてロレッタ、私の心が弱かったせいで悪魔に操られ、ご迷惑をおかけしました……本当に申しわけございません……」
バーバラは目を潤ませると、声を震わせながら私たちに謝罪の言葉を述べた。初めて会った時とはまるで別人みたいだ。
「もういいよバーバラ、怒っていないから顔を上げて」
私はバーバラの手を繋ぐと、仲直りの握手を交わした。スッーとバーバラの頬に一筋の涙が溢れて落ちる。
「ロレッタ、本当に心配したんだぞ……」
今度は少し離れた所で見守っていたクリフト様が私の元に駆け寄ると、両手を広げて私を抱きしめた。
「クリフト様……」
「もう、こんな危険な事はやめてくれ……」
クリフト様の腕に力が籠るのが分かる。温かくて力強いハグに頭がバグりそうだ。
「ロレッタ、初めて会った時から君の事が気になっていたんだ……」
クリフト様は真剣な眼差しで私の目を見つめた。切れ長の綺麗な瞳に動揺しまくりの私が映る。
「好きだよ、ロレッタ……」
クリフト様はそっと顔を近づけると、私の唇にキスをした。
「んんっ‼︎」
それが私にとって初めてのキスだった。熱い何かが体の先端まで行き渡り、次第に甘くなるキスに頭がフラフラしてくる。
「僕と結婚してくれないか?」
「けっ、結婚!?」
生まれて初めて受けた告白に心臓がバクバクと脈打つ。素敵な王子様と結婚する。それが私の夢だった。まさか本当に叶う日が来るなんて……
「わっ、私なんかでいいのですか?」
「あぁ、他の人じゃダメなんだ。僕はロレッタと結婚がしたい!」
不意に視界が滲み出して涙が溢れ出る。少し離れた位置にいたバーバラやユーゴたちも、もらい泣きをしながら拍手を送ってくれた。
「ロレッタ、君の勇敢な姿はまさに王妃に相応しい」
「クリフト様……」
「クリフトで構わない。これからは王妃として僕の隣にいてくれないか?」
「はい! もちろんです!」
私は強く頷いて決意を固めると、もう一度クリフトの胸に飛び込んだ。
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