15話 アランの公開処刑はギロチンで
ロレッタ視点
第一王子アラン様の処刑は長い話し合いの末、中央広場にあるギロチンを使って公開処刑をする事になった。
残酷過ぎるのではないかと反対する人もいたが、『二度とこの様な事を繰り返さないためにも、国民と貴族に今日の事を忘れさせてはならない!』という国王陛下の意見が尊重されて決定した。
毒杯を仰ぐという意見もあったが、むしろその方が苦しいらしい。一方ギロチンは確かに残酷だが本人は苦しむ事はなく一瞬で終わり、見守る方は一生忘れない出来事となる。
国民の税金を自分の贅沢のために使い、国の政治に関わるとても重要な婚約を破棄して他の女性と浮気をしていた。そして逆ギレして私を殺そうとしたアラン王子の事は、今後の国の発展のためにも反面教師としてその名を歴史に残す必要がある。
「大丈夫かロレッタ? 部屋で休んでいいてもいいんだぞ」
クリフト様は私の肩に手を置くと、そっと引き寄せた。実の兄がこれから処刑されるというのに私の心配をするのは何だか変な感じがする。
「いいえ……大丈夫です」
私としては罪人であっても死んでほしくはない。もし何か違っていたら結果は変わっていたかもしれない。そう思うとやるせ無さが込み上げてくる。せめて最後は王様らしく堂々とした態度で罪を受け入れて欲しい。でも、現実はそう上手くはいかなかった……
「嫌だ!!! 死にたくない!!! 僕は何も悪くないんだ! あの魔女が全部仕組んだ事なんだ!」
アラン様は顔をクシャクシャにして泣き叫ぶと、私に対し罵詈雑言を叫び続けた。これでは本当にアラン様はダメな王子としてその名を歴史に刻む事になる。流石に哀れ過ぎる……
「アラン様、どうか、罪を受け入れて反省して下さい」
私は死刑台に登りアラン様を見下ろした。後ろではクリフト様がいつでも私を守れる様に剣に手をかけている。
「うるさい! お前が建国記念日の時に黙っていれば僕の浮気はばれる事なく今頃贅沢な生活が出来ていたのに!」
「それは浮気をした貴方が悪いですよね? 確かに親から言われた人と結婚しなければいけないのは辛い事だと思います……」
自由に結婚が出来ないのはとても不幸な事だと思う。でも……
「アラン王子はこの国の王子です! 自分の私利私欲を求めるのではなく、ちゃんと国民のためにその責任を果たして下さい!」
周りで様子を見ていた傍観者たちから拍手が湧き上がり、私を支持する声援が飛び交う。国民はここぞとばかりに不満をアラン様に浴びせた。
「違うんだ、これは全て魔王サタンの魂が悪いんだ! 僕は悪魔に唆されたんだ!」
「悪魔に唆される? 浮気をしたのはその悪魔に言われたのですか?」
「あぁ、そうさ」
「もしかして、私を殺そうとしたのも、同じ悪魔に言われたのですか?」
「あぁ、そうさ。全部あの悪魔が悪いんだ! あいつに唆されただけなんだ。僕は被害者なんだ!」
アラン様は喉を枯らしながら弁解する。私を魔女呼ばわりして今度は悪魔に唆されたか……良くそんな出鱈目が出てくると逆に感心してしまう。
「なるほど、つまりアラン様は
私がそう尋ねると、アラン様は大きく横に首を振った。
「違う、そう言う意味ではない! 本当に悪魔がいたんだ!」
「それは
「だから違うんだ! 本当に悪魔がいて僕をそそのかしたんだ! 信じてくれ!」
アラン王子は額を地面に擦りつけた。信じてくれと言われてもこれまでの行いを考えると無理な話だ。でも何かが頭に引っ掛かる。何かを見落としている様な……
「いい加減にしろアラン! お前はどれだけ王族の顔に泥を塗ったら気が済むんだ!」
今まで黙って事の成り行きを見守っていた国王陛下がアラン王子を一括した。そして無理やり立たせると、ギロチンの木枠にアラン王子の首を固定させた。
「嫌だ!!!! 死にたくない!! 僕は被害者なんだ!!!! 本当に悪魔に取り憑かれていたんだ!」
悪魔……悪魔……あれ? 以前バーバラも悪魔に取り憑かれて街をメチャクチャにしたよね?
「国王陛下、お待ち下さい! 悪魔については心当たりが……」
慌てて止めようとしたが、顔を真っ赤にして激怒する国王陛下の耳には届かなかった……
「やれ!」
国王陛下の命令によってギロチンがつながれていたロープを処刑官が剣で切断した。三日月型の鋭利な刃が朝日に照らされてキラリと輝く。
「クソ!!!! ロレッタ!!! お前だけは死んでも呪っ………」
アラン王子は最後の最後まで私を恨み、呪いの言葉を言おうとしたが……
ドン!!
全てを言い切る前に首を刎ねられてしまった。切断された首は下に用意してあった袋の中にスポンっと入る。それを見ていた国民からは拍手と喜びの声が上がったが……
──この時を待っていた……
突然、アラン王子の首が入っている袋から低くて不気味な声が聞こえてきた。異変に気付いたクリフト様が私を守ように前に出る。
「ロレッタ、僕の後ろに下がって!」
クリフト様は剣を抜くと袋を一刀両断した。裂けた場所からは血の代わりにドス黒い液体が溢れだす。
──アラン、お前には感謝してるぞ、お前の負の感情が我を進化させる!
「その声……まさか魔王サタンなのか?」
国王陛下が恐る恐る尋ねると、低くこもった声で返事が返ってきた。
──あぁ……そうさ。でも今は少し違うけどな。
闇の塊は粘土の様にぐにゃぐにゃと動くと、巨大なドラゴンに姿を変えた。全身が黒い鱗に覆われて、背中からは巨大な黒い羽が伸びている。瞳の色は金色で鈍い光を放っていた。
「今は厄龍アランと言ったところだな」
厄龍アランは巨大な翼を広げて飛び立つと、広場にいる人に向かって灼熱のブレスを放った。
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