第5話 常識の欠如
少女は一通りこれからのことを考え終わり、目を閉じたまま瞑想している。
この行為に特別な意味があるわけではないが、やることが無い時は少女はいつもこれをしている。
コンコン。
「半妖さーん。入浴の準備ができましたよー」
少女の方は特に答えを返すことなくドアを開けた。
「着替えとタオル持ってきました」
「ありがとうございます」
「それでは、いってきます」
「いってらっしゃい」
特に何も考えることなく体を洗い終え、湯船に浸かる。考え事をするのは湯船に浸かるタイミングにしていた様だ。
何かを考える時は何もしていない時が1番集中できるかもしれないと少女は考えている。
それは一般人からすれば至極当然の事だが、学校にも行ったことが無く、ほとんど"一般"というものに触れることが無かったのでその結論に至ったことはむしろ誉められるべきだ。
風呂から上がり、体を拭いて脱衣所を出る。
バスタオルを首からかけ、椿さんに風呂から上がったことを報告しに行くつもりのようだ。
少女は先ほどの椿との会話を思い出しながら椿の部屋を探した。
部屋を出るとリビングがあるが、テレビも消えていて誰も人がいない。
入浴の前に楓がやったようにドアをコンコンとノックした。
「おっ、半妖ちゃ……ちょっと!?」
「……?」
ドアのノックに反応してドアを開けた椿は衝撃の光景を目にした。
開いたドアの目の前に立っていたのは首にかけたバスタオル以外なにも身に付けていない少女の姿だった。
「服は!?」
「脱衣所です」
椿は一旦自分を落ち着かせるために軽めに深呼吸をした。
「なんで着てこなかったの?」
「服を脱ぐところなので」
「着るところでもあるんだよ?」
「そうなんですか」
少女は脱衣所という3文字ををそのまま"衣"類を"脱"ぐための場"所"だと受け取ったようだ。
「報告が遅れました。お風呂出ました」
「それはいいから服着てきて。ねっ?」
「はい、着てきます」
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